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皮膚科医は感染症を専門に[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.31

常深祐一郎 (埼玉医科大学皮膚科教授)

登録日: 2020-12-30

最終更新日: 2020-12-18

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私はアトピー性皮膚炎や乾癬と並んで皮膚真菌症を大きな専門としている。アトピー性皮膚炎は専門外来で指導を受けたし、大学院の研究はアトピー性皮膚炎や乾癬であった。一方、真菌は脈々と続いてきた東大の真菌外来の最後の医師が異動になるので、医局長から誰か続きをやるように言われ、微生物に何となく興味があったので手を挙げたという経緯である。臨床も研究も教えてもらったことがなく、自己学習である。正統派でもなく、業績もないにもかかわらず、私が現在学会や講演会、原稿依頼で一番引き合いがあるのが真菌症である。

真菌症で目立っているのは、私が優秀だからではなく、他に真菌を専門とする医師が少ないからである。一方で、アトピー性皮膚炎や乾癬など免疫関係をやっている人は非常に多い。私は真菌だが、ウイルスを専門とする皮膚科医はより少ない。細菌はさらに少なく、疥癬や、マダニ、シラミ等節足動物は希少である。感染症を専門にする皮膚科医はマイノリティーである。

しかし、皮膚科は元々皮膚黴毒学であったところも多いように、歴史的に感染症の科であった。今でも日本皮膚科学会の「本邦における皮膚科受診患者の多施設横断四季別全国調査」(日皮会誌. 2009;119(9):1795-809)をみても、1位 湿疹群、2位 真菌感染症群、3位 ウイルス感染症群、4位 ざ瘡・細菌感染症群で、皮膚科は依然として感染症の科である。

感染症が敬遠される理由を考えてみると、まずは病原体の細かな分類で、取っつきにくい。また、免疫学が発展したため、乾癬やアトピー性皮膚炎等を研究する人が増え、指導者となり、感染症を教える人が激減した。さらに、新薬が少ないこともある。ここ数年乾癬が新薬ラッシュで、今後アトピー性皮膚炎が続く。新薬が出ないとその領域は注目度が低く、金銭の流入も少なく、人が集まりにくくなる。

しかし、新型コロナウイルスでもわかるように、我々は感染症と隣り合わせである。感染症をやろうという雰囲気が皮膚科に戻ってほしい。

なお、本稿は以前他誌(臨皮. 2020;74(9): 662)に寄せたエッセイを手直ししたものである。


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