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地域医療に根ざしたリウマチ・膠原病診療の開拓[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.30

三崎健太 (北播磨総合医療センターリウマチ・膠原病内科診療科科長)

登録日: 2020-12-30

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リウマチ・膠原病疾患は「治療薬のない不治の病」と揶揄された時代もあったが、平成後期~令和時代にかけて新薬の登場により診断・治療面において大きなパラダイムシフトを迎えた。すなわち、「完治」は難しいとしても「寛解」は十分可能となり、リウマチ・膠原病患者さんも趣味、仕事も含め、普通どおりの生活を送れる良き時代となった。有効な治療薬が登場しても悪性腫瘍と同様に早期発見・早期治療が重要であり、リウマチ・膠原病疾患においても早期に治療介入できた症例が上述の結果を得られるわけであり、診断が遅れると残念ながら目標達成はできないのも事実である。

ちょうど5年前に、私はリウマチ専門医としてこの土地に赴任した。兵庫県の中南部に位置する当医療センターであるが、赴任当時、当医療センター以北に内科医で常勤リウマチ専門医は小生のみであり、無論リウマチ・膠原病疾患を担当する科が内科であることや、リウマチ・膠原病疾患治療の屋台骨となる生物学的製剤/JAK阻害薬治療の知識は患者さんにもなく、文字通りゼロからのスタートであった。

小生も同地域近くの豊かな自然に囲まれた地域の出身であり、幼少時から友人が1日学校を休んで京阪神地区の専門医に受診していた光景はよく覚えている。この地域および当センター以北の兵庫県のリウマチ・膠原病患者さんを助けたい、遠方に通院・入院せずとも当医療センター当科で治療完結できるよう若手の医師、メディカルスタッフらと知恵を絞り、診療体制を構築し現在に至る。拙いながらも関節リウマチ教育入院や地域の先生方との勉強会も徐々に開催し、当医療センター整形外科の先生方の御尽力もあり、2019年4月にはリウマチ・膠原病センターを設立することができた。赴任当時は専門医1名で始めたが、現在は6名のスタッフで楽しく診療に励んでいる。

「地域に根ざした医療」として私が最も重要視しているのが、患者さんとのcommunicationである。「寒うなりましたねぇ~」、「畑、田んぼ仕事はどないですかぁ~」etc、地元の言葉を用いたopen questionで診療を開始し、話しやすい環境をつくることを心掛けている。さらに、当科では外来診察室に関節エコー機器を導入し、エコープローブとともに患者さんに触れるタッチングもcommunication toolとして用いている。お陰様で患者数も年々徐々に増えている状況である。COVID-19、各スポーツの勝敗や各国の大統領選など、予想だにしない出来事が周辺でも起こる中、我々の診療は続く。少しでもよい医療を提供すべく皆で悩み、笑い今後も開拓を続けていきたい。

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