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DX時代における「医療の質」を問う[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.22

青木拓也 (東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部)

登録日: 2020-12-30

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COVID-19パンデミックは、一般産業分野だけでなく、医療分野の変革も加速させつつあり、その代表格がDX(digital transformation)である。医療分野にもオンライン診療、IoT、ビッグデータ、AI、VRなどの新たなサービスやテクノロジーが押し寄せる中、「医療の質」にはどのような変化が求められるのだろうか。

この問いに対峙する上でのキーワードは、PX(patient experience)だと考える。一般産業分野では、既にCX(customer experience)の向上が、DXにおける最重要課題と広く認識されている。DXは、医療の効率性を向上させるだけではなく、患者・住民と医療との「関係性」に大きな変化をもたらす。この新たな関係性のあり方を模索する上で、ケアプロセスにおける患者・住民のエクスペリエンスの評価は必然である。医療の主要目標が、社会全体の健康向上であることは、今後も揺るぎないが、DXの加速に伴い、PXが医療の質指標としての存在感を増すことが予想される。日本ではPXの概念の普及が遅れているが、諸外国は、患者のニーズや価値に即したケアを提供するため、COVID-19パンデミックの前からPXの活用を推進してきた。たとえば、PX調査が全国的かつ継時的に実施され、医療機関での質改善活動のみならず、医療機関の認証(第三者評価)や専門医認定・更新といった医療提供側の質の保証、診療報酬成果払い制度などにも利用されている。PXの評価には、量的アプローチと質的アプローチの双方が用いられ、前者には標準化され計量心理学的妥当性が検証された尺度が使用される。

ここ数年日本でも、現場主導でPXを評価し、質改善に活用する動きがみられはじめている。今後は医療分野にも、単に新たなサービスやテクノロジーを導入するだけで満足するのではなく、PXを活用して患者・住民の視点で医療提供の価値をとらえ続け、柔軟に改良を行っていく姿勢が必要である。すなわち、「新たなサービスやテクノロジー」と「PXの評価と向上」の両輪が、医療分野における真のDXと医療の質向上を推進すると考える。

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