株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

レジリエンスを高める [炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.18

林 篤志 (富山大学附属病院病院長・眼科学講座教授)

登録日: 2020-12-30

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

巷では「ピンチをチャンスに変えよう」とよく言われますが、必ずしも容易ではない。ピンチはピンチなのだと私は思いますが、ピンチによって今まで成しえていなかった事柄を実行できるチャンスが生まれると受け止めています。

まさに昨年初め、突然、世界中を襲った新型コロナウイルス感染症は、世の中を大きく変えてしまいました。当院は、もともと感染症指定医療機関ではありませんでしたが、富山県内に急激に多数の感染患者が発生し、地域医療の基幹病院として多くの入院患者を受け入れました。県内唯一の特定機能病院として高度先進医療を止めることなく感染治療も並行して行う、という難事を病院職員全員の心を1つに団結して成し遂げました。5月には県より第二種感染症指定医療機関にしていただき、感染の第一波、第二波とも当院が担うべき高度先進医療を実施しながら乗り越えることができました。共に頑張っていただいた病院職員全員に感謝の気持ちでいっぱいです。

一昨年から始まった医師の働き方改革では、なかなか前に進めるのが難しいことがありましたが、今回の新型コロナウイルス感染症で期せずして病院の総合力が試され、見事に病院職員全員が、各自の役割を補完しながら病院としての総合力を発揮でき、また、その総合力がとても高いものであることがわかりました。総合力はレジリエンスとも言われ、医療安全で重要な考えですが、これからはレジリエンスを高めることが、病院のすべての問題解決のキーになると思います。この考えで今後の医師の働き方改革等を進めていきたいと思います。

もう1つわかったことは、昨年はほぼすべての医学学会が延期あるいはWeb併用開催となり、今まで当たり前のようにあった毎月の出張がなくなりました。しかし、それで困っているわけでもなく、これまでの出張は、むしろ半分以上は必要なかったとわかりました。一方、若い医師には学会場で緊張感をもって発表する経験が必要であることもよくわかりました。やはり、「ピンチはチャンス」です。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top