1 ペースメーカーとは
ペースメーカー植え込みは,わが国では1974年に保険償還された徐脈性不整脈に対する唯一の有効な治療法である。わが国のペースメーカー植え込み件数は年間約6万件であり,患者の生命予後およびQOL改善に大きく貢献している。
一般的には,症状を有する徐脈性不整脈がペースメーカー植え込みの適応となる。徐脈性不整脈を診断した際は,不整脈による症状(失神,めまい,息切れ,易疲労感など)を認めるかどうかを確認することが非常に重要である。
ペースメーカーは本体(ジェネレーター)と導線(リード)で構成されており,基本的な機能は心筋の刺激(ペース)と自己心拍の感知(センス)である。
緊急時や経過とともに回復が見込まれる場合は,一時的ペースメーカーの適応となる。
2 ペースメーカーの基本設定と一般的な機能
ペースメーカーの動作モードは,アルファベット3文字(例:VVI,DDDなど)で表記される。この動作モード設定は,自己心拍の有無など不整脈の種類により決定する。
AAI⇔DDDモードは,不要な心室ペーシングを防止するためのモードである。
レートレスポンス機能は,活動時に心拍数を調整することでQOL向上に寄与する。
モードスイッチ機能は,上室性不整脈時の急激な心室ペーシング上昇を防止する。
自動出力調整機能は,ペース出力を自動で調整し抑えることができる。電池消耗の防止や閾値上昇によるペース不全に対しても対応できるようになっている。
3 特殊なペースメーカー,アルゴリズム
近年,下記のような新たなペースメーカーやアルゴリズムの有効性が示され,実用化されている。
①リードの植え込みが不要な「リードレスペースメーカー」
②従来の右室ペーシングに比べてより生理的なペーシングである「ヒス束ペーシング」
③心房細動の負荷を減少させるための「心房抗頻拍ペーシング」
4 植え込み後のフォロー
日常生活では電磁干渉に注意が必要であり,適切な指導が必要である。
近年,ペースメーカーの遠隔モニタリングが可能になっており,ペースメーカーの不具合などについて早期に診断できる有用性が示されている。
条件付きMRI対応ペースメーカーが登場し,現在主流となってきている。しかし,MRI非対応の機種である場合や遺残リードのある場合など,MRIに対応できない場合もあるため注意が必要である。