株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

新型コロナの講演事情[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(321)]

No.5031 (2020年09月26日発行) P.65

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2020-09-23

最終更新日: 2020-09-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

講演や特別講義、今年はもちろん激減である。9月までのリアル講演と特別講義を数えてみたら、昨年は31回だったのが、今年はわずか6回。年間を通しても、おおよそ昨年の2割くらいになりそうだ。

ここ何年かは平均して2週間に一度は講演をしていたので、間隔が長く空いてもせいぜい1カ月程だった。それくらいだと、講演の勘所を忘れる前に次の講演という感じになるので、スムーズに話ができる。

今年は勝手が違う。7月にあったリアル講演はちょうど半年ぶり。これはえらくやりにくかった。毎回、講演のたびに自己採点をしているのだが、情けないことに75点だった。まぁ、その採点たるや、どれくらいうけたか、何回くらい笑いを取れたかが基準なので、じつにええ加減なものではあるが。

それにかわって増えているのが、Zoomによる配信である。6~7年前から、毎年、鹿児島大学へ特別講義にお呼びいただいている。去年は大雨のために取りやめになって、今年もコロナにより2年連続で中止かと思ったのだが、Zoomでの遠隔講義となった。

「其の312~314 絶賛の嵐」3回シリーズで書いたように、自分の大学の講義でZoomを使っていたので、手慣れたものだ。学生たちの顔を見ながらだったので、うまくできた。アンケートの結果も上々で一安心。

前日入りして知り合いの先生と地元の肴で酒を飲むという楽しみがなくなってしまうのが大問題だが、これならどこの大学でも簡単に特別講義ができる。いずれ、ネット予備校みたいに、テーマごとに話のうまい教授による特別講演を組み合わせるようなやり方が中心になっていくかもしれない。

ネット開催で、パワーポイントに録音をつけてくださいという学会があった。うまくいかなくともZoomなら一発勝負だけれど、録音となるとやり直しが可能である。なので、チェックと再録音を繰り返し、1時間弱の講演の収録にまる1日もかかってしまった。行って話をした方がはるかに楽やんか。

リアルと配信のハイブリッド形式もあった。聴衆ありだからやりやすいだろうと思ったが甘かった。わざわざ来ていただいた人にはうけたい、という気持ちが湧いてくる。でも、だだっ広い会場にポツポツなので反応はまばら。結局、勝手がよくわからないうちに終わってしもうた。やっぱり慣れたリアルな講演がいちばんちゅうことですな。

なかののつぶやき
「学会に関しては、ハイブリッド形式が主流になっていくかもしれませんね。時間とお金をかけて学会場へ行く必要がなくなるし、方式にもよるけれど、録画配信されたら、バッティングしたセッションの内容だって聞けるし。学会ではなによりも懇親会が大事、っちゅうような人以外にとっては、ほとんど問題がないような気がします。もちろん、学会ついでに遊びに、という楽しみはなくなってしまいますけれど」

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top