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【識者の眼】「『オーソライズドジェネリック』はジェネリックの扱いでよいのか?(2):薬剤費コントロールの効果が減少」坂巻弘之

No.5031 (2020年09月26日発行) P.58

坂巻弘之 (神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)

登録日: 2020-09-09

最終更新日: 2020-09-09

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前回(No.5030)述べたように、オーソライズドジェネリック(以下、AG)は、AG販売企業が大きなシェアを獲得できるだけでなく、先発品企業もライセンス料等を得ることができ、長期収載品への依存を残しているといえる。

AGは先発品企業のデータを用いて薬事承認を得ることができるため、他のジェネリック医薬品に先んじて薬価収載されることも可能な場合がある。AGが先行して収載され、その後、一般のジェネリック医薬品が10品目以上収載された場合、経口剤であればルール上、初収載薬価の掛け率は、AGは先発品の5掛け、それ以外のジェネリック医薬品は4掛けとなり、AGの薬価が高くなる。収載時期によっては、薬価改定後もこの「価格差」が残ることもある。

AGは一般のジェネリック医薬品と比べて、有効成分のみならず、原薬、添加剤、製法等が先発品と同一であり、患者に対するAGへの切り替えの説明が比較的容易であることから大きなシェアを獲得している。さらに、市場実勢価は、一般のジェネリック医薬品に比べて高くなる傾向があり、薬価改定後、AGは、同一成分の一般のジェネリック医薬品に比べ、高い価格帯に位置付けられることが多い。すなわち、相対的に高価なAGが多く使用されることは、薬剤費コントロールへの効果が薄れることを意味する。

一方、ジェネリック医薬品の安定供給も議論されているが、AG1品目が大きなシェアを占め、残りを一般のジェネリック医薬品が競争することは、ジェネリック医薬品の実勢価引き下げへのプレッシャーにもなるし、原薬等購入価格の競争力を削ぐことにもなるため、安定供給不安につながる要因にもなっている。

そもそも、AGをジェネリック医薬品として扱うべきなのであろうか。前回指摘したように、一物2価という問題がある。それであれば、AGはジェネリック医薬品として扱わず、先発薬と同一価格にしたらどうであろうか。さらに、AGが発売された先発品は長期収載品依存の問題もあるので、その先発品の薬価も引き下げる、当該先発品企業は新薬創出加算の対象外とするなどの措置を課すことも検討してはどうだろうか。

AGをジェネリック医薬品として扱わないので、医療機関、薬局における加算も対象外となる。一時的には、ジェネリックシェアの目標80%は後退するだろうが、薬剤費コントロールとのバランスを勘案しつつ、大胆な議論をすべきと考える。

坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[薬価]

▶「『オーソライズドジェネリック』はジェネリックの扱いでよいのか?(1):形を変えた長期収載品依存」坂巻弘之
  https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15468

▶「『オーソライズドジェネリック』はジェネリックの扱いでよいのか?(3):バイオ医薬品も一物二価に」坂巻弘之
  https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15829

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