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【識者の眼】「『オーソライズドジェネリック』はジェネリックの扱いでよいのか?(1):形を変えた長期収載品依存」坂巻弘之

No.5030 (2020年09月19日発行) P.54

坂巻弘之 (神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)

登録日: 2020-09-09

最終更新日: 2020-09-09

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これまで、薬剤費コントロールの視点から高額となる薬価算定の課題について論じてきた。薬剤費コントロールのためには、特許切れ医薬品(長期収載品とジェネリック医薬品)の価格設定のあり方の議論と、ジェネリック医薬品の使用促進も重要である。

新薬を創出する製薬企業に対しては、革新的新薬開発のインセンティブを適切に与えつつ、長期収載品に頼る経営とならないような薬価の仕組みが重要である。2017年12月の薬価制度の抜本改革に向けた基本方針でも「長期収載品への依存からの脱却」が示されている。

ところで、「オーソライズドジェネリック(以下、AG)」というものをご存じだろうか。AGとは一般的には、有効成分のみならず、原薬、添加物、製法等が先発品と同一である後発品をいう(中央社会保険医療協議会薬価専門部会、2017年8月9日)。これには、先発品とは別の企業が先発品企業からの情報提供を受けて、同じ成分・製法で製造した製品と、先発品と同じ工場で製造した先発品と全く同一の製品がある。いずれにしても、先発品とAGは、同じものであるにも関わらず、それぞれの薬価は異なっており、「一物2価」という奇妙な状態になっている。

医療現場では、先発品と同じということで、患者への説明も簡単であり、先発品から完全に切り替えることも可能で、在庫リスクも一般のジェネリックに比べ小さい。それにも関わらず、医療機関、薬局におけるジェネリック医薬品に関する加算も算定できることから、AGのシェアは極めて大きくなっており、品目によって異なるが、1品目で当該成分のジェネリック市場の6割以上のシェアを占めるものもある。

そのため、AGは製薬企業にとって魅力的な製品であり、2020年6月収載のAGは8成分(ジェネリック全体の初収載は18成分)と、このところの薬価収載をみても増加している。先発品企業にとっても、後発品追補に伴う先発品からの医療機関での切替を、AG販売企業からのライセンス料や製品供給の形で市場防衛することが可能となるわけで、形を変えた長期収載品依存といえる。

次回は、AGの薬価や薬剤費、ジェネリック市場に与える影響などもみながら、AGの扱いについて私見を述べていく。

坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[薬価]

▶「『オーソライズドジェネリック』はジェネリックの扱いでよいのか?(2):薬剤費コントロールの効果が減少」坂巻弘之
  https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15469

▶「『オーソライズドジェネリック』はジェネリックの扱いでよいのか?(3):バイオ医薬品も一物二価に」坂巻弘之
  https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15829

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