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【識者の眼】「『オーソライズドジェネリック』はジェネリックの扱いでよいのか?(3):バイオ医薬品も一物二価に」坂巻弘之

No.5040 (2020年11月28日発行) P.56

坂巻弘之 (神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)

登録日: 2020-11-05

最終更新日: 2020-11-05

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ジェネリック医薬品(GE)は、先発医薬品と「同一」の有効成分から作られており、この有効成分は化学合成されたものである。一方、近年、遺伝子組換え技術や細胞培養技術などのバイオテクノロジーを用いて製造されるバイオ医薬品が数多く承認されている。バイオ医薬品は、タンパク質で糖鎖等の構造を有し、製造工程も複雑であるため、構造や構成成分(分解物や不純物等)の不均一性が生じうる。

バイオ医薬品も特許が切れると、別企業から「後続品」が発売されるが、不均一性があるため、化学合成GEとは異なり、「同等/同質」の品質、安全性、有効性を有する医薬品として承認される。そのため、バイオ医薬品では、一般には「後発」と言わず、「バイオ後続品」あるいは「バイオシミラー」(BS)と呼ばれる(また対応する新薬も「先発品」ではなく、「先行品」と呼ぶ)。BSは、化学合成GEと異なり、製造や開発コストもかかるため、その薬価も先行品の0.7掛けを基準に設定される。バイオ医薬品は高額であるため、BS置き換えによる患者負担や財政への影響は大きく、BSの普及が望まれている。

ところで、バイオ医薬品でもオーソライズドジェネリック(AG)が承認されている。「バイオAG」とは、厚生労働省でも定義が曖昧であるが、先行品企業で作られたバイオ医薬品を、別の会社用に製剤化してGEとして承認された製品である。先行品と全く「同一」成分でありながら、「後発医薬品」として承認され、特例として0.7掛けの薬価となっている。日本でも2019年8月にバイオAGが発売され、先行品の関係企業から発売されている。

バイオAGは、商品名こそ違え、全く同じ成分の製品が二つの薬価で販売されており、一物二価である。先行品企業としては、バイオAGにシェアを譲っているが、関係会社であり、ロイヤリティ収入も受けている。これまでと同じ製造量を確保できていることも含め、長期収載品依存の構造と言わざるをえない。バイオAGは、諸外国でも数品目しか発売されておらず、発売した企業には、一物二価の企業姿勢に批判が集まっているとされる。バイオ医薬品のAGについても、承認や薬価のあり方についてさらに議論されるべきである。

坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[薬価]

▶「『オーソライズドジェネリック』はジェネリックの扱いでよいのか?(1):形を変えた長期収載品依存」坂巻弘之
  https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15468

▶「『オーソライズドジェネリック』はジェネリックの扱いでよいのか?(2):薬剤費コントロールの効果が減少」坂巻弘之
  https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15469

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