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カレルとヘイフリック [なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(38)]

No.4741 (2015年03月07日発行) P.73

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-14

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  • アレクシス・カレルとレオナルド・ヘイフリック、この2人の偉大な科学者の名前とその因縁を知っているという人は、かなりの細胞生物学フリークだ。

    ヘイフリックの方が有名だろう。正常な細胞の分裂回数は有限であるという、いまや常識となっている「ヘイフリック限界」に名を残すヘイフリックである。

    60年代、この内容を発表するとき、大きく立ちはだかったのが、ノーベル医学生理学賞受賞者のカレルであった。直接に妨害されたわけではない。すでに、カレルは十数年前に亡くなっていたのだから。

    では、どうしてか? ヘイフリックの論文から半世紀近く前、カレルが、培養細胞は不死であることを報告し、そのことが広く受け入れられていたためである。

    カレルはリヨン出身のフランス人であるが、ニューヨークにあるロックフェラー研究所に在籍しており、1912年、『血管縫合および臓器の移植に関する研究』によって、アメリカ合衆国に最初のノーベル賞をもたらしたセレブ医学者であった。そのような背景があったため、無名の若手研究者の論文は、一流誌への掲載を断られた。

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