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【識者の眼】「新規の下剤はお高い」宮内倫也

No.5007 (2020年04月11日発行) P.65

宮内倫也 (可知記念病院)

登録日: 2020-04-10

最終更新日: 2020-07-03

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筆者は精神科医ですが、便秘と精神疾患、便秘と向精神薬は切っても切れない縁で結ばれているため、下剤を頻繁に処方します。そんな便秘界隈では周知の通り新薬が次々と登場しており、最近ではモビコール(一般名:マクロゴール4000、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム)の販売が開始されました。どの新薬も薬価が高く、一日量では200円前後、モビコールは最大6包を使用すると約500円にもなります。モビコールはとても良い薬剤ですが、販売時期がグーフィス(一般名:エロビキシバット)の後だったため薬価が高くなってしまいました。せめてアミティーザ(一般名:ルビプロストン)の前に販売されていれば…。

製薬会社によるモビコールの説明会では「各国で第一選択」と言われます。そのとおりなのですが、薬価で日本とは事情が異なる点に注意が必要です。例として米国消化器病学会のガイドライン1)を挙げると、確かにモビコールが推奨されています。それは、効果という点もさることながら、コストという点を重視しているのです。米国ではモビコールは新薬でも何でもなく、薬価と効果とのバランスが非常に良いのです。

モビコール以外の新薬は、どの国でも薬価が高いため、優先順位が高くありません。日本には『慢性便秘症診療ガイドライン』2)がありますが、アミティーザを始めとした新薬への推奨度とエビデンスレベルの付け方がおかしく、コストという点も意識しておらず、大した参考になりません。そして、アミティーザ、リンゼス(一般名:リナクロチド)、グーフィスといった新規の下剤が既存のものより優れた緩下効果を持っているわけでもないのです3)。お財布には効きすぎて下痢をしてしまうくらいなのですが…。

日本は国民皆保険制度のおかげか、医療者も患者さんも薬価をあまり意識しません。しかし、医療費が増大している今だからこそ、コストを意識し古くて安い薬剤をうまく使う技術が大事。個人的には、酸化マグネシウム、カルメロース、ソルビトールを好んでいます。酸化マグネシウムは製薬会社の後押し(?)もあり、危険性が過剰に叫ばれているように感じます。カルメロースは膨張性下剤で、いぶし銀のような存在。ソルビトールは便秘症への適応がありませんが薬価が異様に安く、ラクツロースと同等の効果を有しています。

【文献】

1) Bharucha AE, et al:Gastroenterology. 2013;144(1):218-38.

2) 日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会, 編:慢性便秘症診療ガイドライン2017. 南江堂, 2017.

3) Nelson AD, et al:Gut. 2017;66:1611-22.

宮内倫也(可知記念病院)[精神科][便秘症]

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