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「見えざる敵」のむずかしさ[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(292)]

No.5002 (2020年03月07日発行) P.67

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2020-03-04

最終更新日: 2020-03-03

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COVID-19感染、大変である。何が大変かというと、どれくらい大変であるかがようわからんくらいに大変である。

不顕性感染があるからといって、不特定多数を検査するわけにはいくまい。人を見たら泥棒と思え、ではないけれど、今のところどこにでも感染者がいるという前提で行動せねばならんというところだろう。

そこまでする必要があるのかと思うが、大規模イベントの中止要請があった。結果的に意外と早く収束して、ちょっと過剰対応やったんとちゃうんかということになる気がしないでもない。しかし、たとえそうなったとしても、多くの人がそれなりの行動制限をしたせいかどうかがわからない。

2月の中旬から下旬にかけて、東京での所用ついでに、国立劇場の文楽と歌舞伎座の歌舞伎を見に行った。どちらも、かつて経験がないほど空席が目立った。けっこう高いチケット、キャンセルできないだろうに。

ちょうどその中間くらいに、大阪で、とある落語家さんの独演会に行った。こちらはほぼ満席。何日か続く公演と1回きりの独演会では事情が違うかもしれないが、東京の人の方がこういうことに対してはセンシティブなのかと思ったりもする。

とはいえ、東京でいちばん恐ろしいのは、そのような場所よりも、満員電車ではないか。あの殺人的な混雑は大阪の比ではない。もちろん大阪でも満員電車は避けた方がいいけれど、普段から結構な早朝出勤なので、これまで以上というのは無理な相談である。

つり革や手すりもなんだかよろしくないような気がするが、車両が揺れたりすると、無意識のうちに手がでる。で、おっとぉとか思いながら触れる直前で引っ込める。我ながら怪しげな動きで、つい苦笑してしまう。

顔に手をやらない方がいいらしいが、これを止めるのはかなり難しい。人間というのは、顔を触る動物であるということを認識した。アレルギー気味ということもあって、無意識に目や鼻を触ってしまうし。

やたらと手をよく洗うようにもなった。普段は小用のあとで神社の手水みたいに洗うだけだが、今は違う。もっと頻繁に、ちゃんと石けんをつけて、もみ洗いを30秒ほどもしている。やればできるおっさんである。

あんなことしてたのはアホみたいやったなぁ、と笑える日が早くきてほしい。でないと、洗いすぎで手が荒れてかないませんわ。

なかののつぶやき
「今年はインフルエンザ感染がすごく少ないとか。みんな、やる気になったら予防できるということですな。今回のように、それほど重症化率が高くないウイルスでこれだけの混乱ですから、もっと悪性のウイルスが流行りだしたりしたら、社会は完全にパニックになるでしょうね。今回の経験を元に、いろんな対策をきちんと練っておかないとあかんということですな」

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