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■NEWS 急性期入院1の該当患者割合を31%に引き上げ─中医協・総会

No.4998 (2020年02月08日発行) P.67

登録日: 2020-01-31

最終更新日: 2020-01-31

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厚生労働省は129日の中央社会保険医療協議会・総会に、2020年度診療報酬改定の個別改定項目(いわゆる「短冊」)を提示した。この日は主に、入院や働き方改革について議論し、「急性期一般入院料1」における「重症度、医療・看護必要度」(以下、「看護必要度」)の該当患者割合の基準値を看護必要度I31%、II29%に引き上げることを決めた。「入院料4」はI22%、II20%に引き下げ、入院料14の基準値を3ポイント刻みに等間隔で設定する。

議論の中で支払側は「入院料1」の基準値を看護必要度Iの場合で35%に大幅に引き上げ、各入院料の基準値の間隔を広げることを改めて提案。診療側は、医療機関経営に及ぼす影響への懸念から大幅引き上げは避けるべきだとし、「入院料1」の基準値を27%〜28%、「入院料4」は18%〜19%と、現行よりもむしろ低い水準に見直すことを求めた。だが、両者の意見の差が埋まることはなく、最終的には前回同様、公益裁定で決着することになった。

■入院料4の届出施設に配慮、入院料23Iでの評価も可能に

見直し後の基準値は、看護必要度Iの場合(入院料23IIが原則のため200床未満の経過措置以外は基準値の設定なし)が、▶入院料131%(現行:30%)、▶入院料228%、▶入院料325%、▶入院料422%(27%)。IIは、▶入院料129%(25%)、▶入院料226%(24%)、▶入院料323%(23%)、▶入院料420%(22%)―とし、IIIの基準値の差は2ポイントとする。

「入院料4」は、厚労省が行った判定基準や項目の見直しに関するシミュレーションで、特に看護必要度Iでの評価の場合に、見直しによる該当患者割合の変動が大きくなることが判明。現在の基準値のまま据え置けば、相当数の医療機関が施設基準を満たせなくなる恐れがあるため、基準値を下げることにした。

「入院料23」の届出数や看護必要度IIの活用を促す施策も導入する。これまで看護必要度IIでの評価が原則とされていた「入院料23」について、Iを用いた場合の届出を新たに認めるほか、許可病床数400床以上の医療機関については看護必要度IIによる評価を要件化する。

■救急病院・勤務医の特例的対応で「地域医療体制確保加算」を新設

医師の働き方改革では、消費税財源で手当てする特例的対応として(本体0.08%引き上げ分)、「地域医療体制確保加算」を新設。地域の救急医療体制で重要な役割を担う医療機関の医師働き方改革を後押しする。救急車または救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が年間2000件以上であることを施設基準に設定。勤務医の負担軽減と処遇改善につながる体制の整備として、▶勤務医の勤務状況を把握し改善の必要性などを助言する責任者の配置、▶「病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」の作成、▶病院勤務医の負担軽減と処遇改善に関する取り組み事項の院内掲示―などを求める。

年間救急搬送件数が2000件未満の救急医療機関のうち、一定の要件を満たす施設の医師働き方改革は、診療報酬ではなく、「地域医療介護総合確保基金」で別途、財政支援する。また、「医師事務作業補助体制加算」は、算定可能な病棟を「有床診療所入院基本料」や、「有床診療所療養病棟入院基本料」、一般病棟ではない「回復期リハビリテーション病棟入院料」と「地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料」の届出病棟などにも拡大する。

■地ケアは400床以上医療機関の新規届出を不可に

入院料のうち「地域包括ケア病棟入院料」は、許可病床数400床以上の病院において自院の一般病棟からの転棟患者の割合を6割未満とすることを要件化。超過した場合は、入院料を減額する。これに加えて今後は許可病床数400床以上の病院からの新規届出を認めない見直しも行う(ただし、すでに届け出ている病棟・病室の維持は容認)。「入院料(入院医療管理料)」の実績要件では、自宅などからの入院患者割合(15%以上)と緊急患者の受入れ数(3カ月間で6人以上)の基準を厳格化。在宅医療の実績は、既存項目の分割や「開放型病院共同指導料」の算定を削除、「退院時共同指導料2」の算定の追加などで6項目に再編成し、2項目以上を満たしていることを要件とする。その際、「在宅患者訪問診療料」などの在宅サービスの提供実績の基準は引き上げ、これまで医療機関と同一敷地内にあることを求めていた在宅サービス提供施設を併設でも差し支えないこととする。

「回復期リハビリテーション病棟入院料」は、リハビリテーション実績指数の要件を「入院料1」は40以上(現行:37以上)に、「入院料3」は35以上(30以上)に引き上げる。算定要件(入院料16共通)も見直し、入院患者に入院時F I Mと目標F I Mについてリハビリテーション実施計画書を使って説明し、計画書を交付することを追加。退院時F I Mも同様の扱いとする。

このほかの項目では、紹介状なしで受診した患者からの定額負担徴収を義務化する対象を、特定機能病院と一般病床200床以上の地域医療支援病院に拡大。「入院時支援加算」は、入院前に行うとされている項目(ア〜ク)を全て実施した場合の上位区分(加算1)を新設する。「入退院支援加算12」は、高齢者の総合的な機能を評価し、その結果に沿った支援を行った場合の加算(総合機能評価加算)を新たに設ける。これに伴って従来の「総合評価加算」は削除する。

■医療機関からの訪問看護で「訪問看護・指導体制充実加算」を新設

在宅医療の関係では、医療機関からの訪問看護について、一定の実績要件を満たす場合の「在宅患者訪問看護・指導料」などの加算として、「訪問看護・指導体制充実加算」を新設する。施設基準では、実績要件として「在宅患者訪問看護・指導料3」や「在宅ターミナルケア加算」の算定実績など、6つある項目の2項目以上を満たしていることを求める。「訪問看護基本療養費(I)、(II)」は週4日目以降の評価を、看護師などによる訪問と、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問の場合で区分。訪問看護計画書に訪問看護を提供する予定の職種を、訪問看護報告書に訪問看護を提供した職種を記載することを算定要件にそれぞれ追加する。

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