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ユニセックストイレに入って考えた[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(282)]

No.4990 (2019年12月14日発行) P.62

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2019-12-11

最終更新日: 2019-12-10

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ユニセックストイレという言葉をご存じだろうか。性別に関係なく使うことができるトイレのことである。日本ではジェンダーフリートイレとも呼ばれる。
昔は、小便器と個室の両方が備わっている男女共用のトイレが結構あった。小用をたしている男性の後ろを女の人が通って個室にたどり着くようなやつである。ずいぶん少なくなっているし、今の時代、そんなトイレで立ち小便をするのは落ち着かない。

ひとつしかトイレのない小さな店舗や、飛行機のトイレは定義上ユニセックストイレである。それなら何度も使ったことがある。しかし、個室がいくつも並んでいるようなユニセックストイレは初めてだった。

バルセロナでのことだ。「つぶやき」の写真のような表示があった。あぁ、これがユニセックストイレというものかと思い、ややためらいながら入った。

ビックリした。女の人が手を洗っていたのである。なにもビックリすることはないのだが、習い性というのは恐ろしい。何だか見てはいけないものを見たような気がして、コソコソと出ようとした。
そしたら、その女性から、“No problem, come in”と言われた。言われるまでもなくno problemであるから、入り直しはしたけれど、なんだかヘンな気分だった。

部屋になっている訳ではないが、東海道新幹線のトイレはこれに近い。個室が2つ、男性小便用の個室が1つ、洗面台が2つだ。その間の通路で、時には男女が混じりあって並んでいる。そう思うと、ユニセックストイレの心理的抵抗感は一気に下がる。

どうでもええですけど、新幹線の男性用個室いうのはなんとも微妙ですよね。立ち小便をしている男の人の背中を小窓から見られるようになっているんですから。

それはいいとして、劇場では女性トイレだけが長い列をなしていることが常なので、ユニセックスにしたほうが合理的かもしれない。しかし、全部を個室にするとスペースを取り過ぎる。が、これも新幹線型男性個室(というのか…)で解消できそうだ。

まぁ、そこまでして作る必要があるかどうかはやや疑問である。女性はお化粧がしにくかろうし、男女ともいつまでたっても心理的抵抗感は消えないだろうし。

などと、一度だけの経験であれやこれやと考えてしまったのでありました。

なかののつぶやき
「バルセロナのパブリックスペースにあったユニセックストイレの案内表示。中には5~6個の個室と洗面台がありました。これから日本でも増えていくのでありましょうか」

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