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乳幼児の食物アレルギーへの対処法の最近の考え方

No.4988 (2019年11月30日発行) P.55

田中敏博 (静岡厚生病院小児科診療部長)

大谷清孝 (きりんキッズアレルギークリニック院長)

登録日: 2019-11-28

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  • 10カ月の男児。離乳食としてよく加熱した卵(全卵)をまぶしたおかゆを口にして,約20分後に軽い瘙痒を伴う発疹が口周囲に出現。約30分後に消失。加熱した卵を含む離乳食はこれまでも食べさせたことがあったとのこと。母親から,卵は食べさせないようにしたほうがよいのか,そもそも離乳食の開始前に食物アレルギーがないか検査をしてからにしたほうがよかったのか,と質問されました。特に乳幼児を中心にして,食物アレルギーとそれに対する対処法の最近の考え方を教えて下さい。きりんキッズアレルギークリニック・大谷清孝先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    田中敏博 静岡厚生病院小児科診療部長


    【回答】

    【過剰診断,無駄な除去,成長障害へのリスクを考慮した慎重な判断が必要】

    本症例の症状のように口周囲の発疹のみでは,必ずしも食物アレルギーとは言えず,食品がついて生じた接触性皮膚炎のことがほとんどです。鶏卵を除去せずに摂取を繰り返すことで症状を認めなくなると考えられます。しかし発疹が食品の付着した以外の離れたところに出現したときは,食物アレルギーの可能性を含め専門医に相談することをお勧めします。

    湿疹を十分コントロールしたアトピー性皮膚炎の生後6~12カ月の乳児121人に対して,少量の加熱鶏卵を与える群と与えない群に無作為に抽出した比較検討では,1歳時における鶏卵アレルギーの発症が,摂取群で8%であったのに対し,非摂取群で38%であったと報告されています(PETITスタディ)1)。また,鶏卵早期摂取と鶏卵アレルギーに関するメタアナリシスでは,鶏卵早期摂取は鶏卵アレルギーの発症予防に対して有効であると報告されています2)。また,2019年3月に公表された「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」の離乳の進め方の目安では,生後5,6カ月に加熱卵黄が記載されています。本症例はもともと加熱卵の摂取が可能ですので,鶏卵を除去せずに摂取を継続したほうがよいでしょう。

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