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成育限界児の生命予後と神経学的予後

No.4981 (2019年10月12日発行) P.56

井上普介 (九州大学小児科助教講師)

落合正行 (九州大学小児科准教授)

酒井康成 (九州大学小児科准教授)

登録日: 2019-10-13

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【長期予後の改善が次の目標である】

わが国の総出生数は減少し続けているが,早産児/低出生体重児の出生率は増加している。わが国の新生児死亡率(0.9/1000人)は,周産期医療の進歩,国民皆保険制度や社会経済的変化などによって,他の先進国(カナダ3.2人,米国3.7人)と比べて最も低くなった。

では,在胎22~24週のきわめて未熟な成育限界児の予後はどうなっているのだろうか。2000~09年に当院で出生した在胎22~24週児は51人(極低出生体重児の12%)であり,1年生存率は52%から79%に上昇した。一方,3歳時発達指数50未満の児は30~41%であった1)。全国のNICUを対象とする大規模(極低出生体重児約4万人)データベースであるNeonatal Research Network of Japanの調査では,出生体重500g以下のきわめて小さな成育限界児のNICU生存退院率は03年から12年までに40%から68%と上昇していた2)。一方,何らかの神経学的後遺症を有する3歳児は半数を超えていることが明らかとなった3)

成育限界にあるわが国の新生児が生存できるようになったことは,素晴らしい成果である。彼らの健やかな成長と発達をめざした新生児医療の進歩と,次世代を育む社会的取り組みが私たちの新たな課題である。

【文献】

1) Ochiai M, et al:Neonatology. 2014;105(2):79-84.

2) Inoue H, et al:J Pediatr. 2017;190:112-7, e3.

3) Inoue H, et al:Pediatrics. 2018;142(6): e20174286.

【解説】

井上普介*1,落合正行*2,酒井康成*2  九州大学小児科 *1助教講師 *2准教授

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