この夏、劇場映画『痛くない死に方』の医療監修者として撮影に同行させて頂いた。今回、その雑感を書かせて頂く。この映画は、拙書『痛い在宅医』(ブックマン社、2017年)と『痛くない死に方』(同社、2016年)を原作として、日本映画界を牽引する高橋伴明監督自らが脚本を書きメガホンを取られた。人気俳優の柄本佑さんが主演を務め、名だたる有名俳優たちが医療職や患者役を演じた。本映画のテーマは在宅医療、終末期医療、緩和ケア、看取りで、従来の医療映画とまったく異質な辛口作品である。高橋監督は「65歳を超えたころから自分の死を考えるようになった。この映画が遺作になると思い取り組んでいます」と意気込みを語っている。まさに団塊の世代が全員後期高齢者になる2025年問題を強く意識した内容である。
ドキュメンタリーである拙書『痛い在宅医』が高橋監督の目に留まり、映画化という幸運に恵まれた。一言で述べるなら「在宅における平穏死」を私独自の表現法を用いて描かれた作品である。在宅医療や人生会議が国策となっているが、現実には美談だけで済まされないケースもあり、在宅医療の質の向上が課題になっている。在宅医療の良い点と不便な点、その両面を広く知ってもらえる作品である。様々な看取りの場面がリアルに描写されている点も特徴だ。