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【識者の眼】「人口減少地域での病院と施設の連携」小野 剛

小野 剛 (市立大森病院院長、一般社団法人日本地域医療学会理事長)

登録日: 2025-09-11

最終更新日: 2025-09-09

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団塊の世代が75歳以上になる2025年に突入して、8カ月が経った。高齢化と人口減少のトップランナーにある当地域では、2020年に医療ニーズのピークを迎え、現在は減少傾向にある。介護ニーズも2030年までは増加していくものの、それ以降は徐々に減少することが予測されている。

昨今、外来・入院患者数は減少しているが、在宅などの訪問診療件数は以前よりも多くなってきている。筆者も長年、在宅訪問診療を行っているが、ここ数年は自宅への訪問診療よりも、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅といった施設への訪問診療が増えている。当地域では、高齢者単独世帯や高齢者夫婦世帯が多く、自宅で介護することが難しいことや、病気で入院し退院が可能な状態になっても自宅へ帰ることができず施設に入所することになる患者が多いこと、が要因と考える。

当院は既に、地域にある多くの施設と協力医療機関として連携を行っているが、病院と施設の連携強化は喫緊の課題であると考える。2024年の診療報酬・介護報酬同時改定では、「協力医療機関連携加算」が新設された。主な要件は、①入所者等の病状が急変した場合等において、医師又は看護職員が相談対応を行う体制を常時確保していること、②高齢者施設等からの診療の求めがあった場合において、診療を行う体制を常時確保していること、③入所者等の病状が急変した場合等において、入院を要すると認められた入所者等の入院を原則として受け入れる体制を確保していること、である。

また、施設と協力医療機関との間で入所者等の同意を得て現病歴などの情報共有を行う会議を定期的に開催することが求められている。介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院では、3年間の猶予はあるものの医療機関との連携体制の構築が義務づけられることになった。2024年12月時点で、協力医療機関を定めている介護保険施設の割合は、介護老人福祉施設で約6割、介護老人保健施設や介護医療院で約7割となっている。経過措置の期限まで、まだ1年以上あるが、未登録の介護保険施設は早めの対応が必要だと思っている。有料老人ホームやグループホームなどは「努力義務」となっているが、次の介護報酬改定では「義務」になる可能性もあり、準備が必要だと考えている。

数年前までは、施設嘱託医や協力医は診療所医師が担うことが多かった。しかし最近は、当地域の診療所医師も高齢となり、訪問診療や施設診療の実施が困難になったことから、当院がその役割を担っている。さらに、ここ数年の人口減少に伴い、外来患者数も減少する状況の中で、承継も難しく閉院せざるをえない診療所も目につくようになってきた。

今後、都市部以外の地域では、診療所数の減少が予測され、地域の中小規模病院が、かかりつけ医機能や在宅医療、施設診療、産業医、学校医など、これまで診療所医師が担ってきた役割を行っていくことが求められるのではないかと思っている。そのためにも「ひとと地域を丸ごと診る」総合診療医が育成され、地方の中小規模病院で活躍することを期待している。

小野 剛(市立大森病院院長、一般社団法人日本地域医療学会理事長)[訪問診療][協力医療機関連携加算

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