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ラダック再訪(その3)─Becoming Who I Was[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(269)]

No.4977 (2019年09月14日発行) P.65

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2019-09-11

最終更新日: 2019-09-10

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チベットが中国化を余儀なくされる中、いまやラダックはチベットよりもチベットらしいと言われることがある。そこでの主たる宗教は、もちろんチベット仏教だ。

チベット仏教では輪廻転生が信じられている。いくらなんでもそんなことあるはずがない、と思うのだが、そうとしか考えられない事例がいくつもあるという。

なかでも、高僧(リンポチェ)は幾度も生まれ変わるとされている。その転生は、前世の記憶の確認によっておこなわれる。あのダライ・ラマも、そのようにして認められた偉大なリンポチェの一人である。

『輪廻の少年』というドキュメンタリー映画がある。NHK BSで何度か放映されたので、ご覧になった方もおられるかもしれない。その原題が『Becoming Who I Was』、なかなか示唆に富んだタイトルだ。

主人公は、パドマ・アンドゥ少年と、そのお世話をするウルギャンさん。アンドゥ少年は、チベットの寺院に住んでいたリンポチェの生まれ変わりである。前世での弟子が、いつかチベットから迎えに来ると信じ、リンポチェとして暮らしている。

しかし、中国のチベット政策のためか、いつまでたってもやって来ない。輪廻にはよくあることらしいが、成長するにつれて前世の記憶が薄れていく。次第に立場の悪くなるアンドゥ少年。ウルギャンさんと共に、チベットを目指す長い旅に出る。

というのがあらすじだ。チベット仏教の情景、2人が助け合う質素な暮らし、ラダックの美しい風景、そして、何よりもアンドゥ少年の輝くような表情。どのシーンも素晴らしい。そして、最後は絶対に泣ける。

今回のラダック行きの目的は、なにもないドムカル村へ行く、トレッキングをする、そして、サクティ村でお祭り(ツェチュ)を見物する、の3つだった。

ツェチュは、チベット文化圏に仏教を伝えたインド出身の聖者グル・リンポチェを讃える仮面舞踏である。そのクライマックスの隊列の中に、アンドゥ少年を発見。うわぁ、いまも元気に修行してるんや!

昔に会ったきりの親戚の子に巡り会えたような気持ちがした。幼いころからいくつもの紆余曲折を経験したためだろうか、心なしか憂いを含んでいるように見えたのが気になった。そして、翌日はウルギャンさんに会いに行くことに。

なかののつぶやき
「『輪廻の少年』ノーカット完全版はアジアンドキュメンタリーズ(https://asiandocs.co.jp/)で配信されています。オススメです。ぜひ!」

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