株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

透析患者の自動車運転[先生、ご存知ですか(21)]

No.4975 (2019年08月31日発行) P.60

一杉正仁 (滋賀医科大学社会医学講座教授)

登録日: 2019-08-30

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本透析医学会の調査に基づいた、透析患者の現状をご紹介します。2017年末時点で慢性(一時的なものを除く)の透析患者は33万4505人であり、過去最高の数字です。患者数は1990年に初めて10万人を、2000年に20万人を超え、年々増加しつつあります。しかし、2017年は前年比4896人増で、伸び率はやや鈍化しています。

新たに透析患者となる人は年間4万959人です。わが国では国民の約380人に1人が透析療法を受けていることになりますが、この数字は台湾に次いで世界第2位だそうです。なお、国内で人口当たりの透析患者数が最も多い県は徳島県で、熊本県が続きます。透析患者の平均年齢は68歳ですが高齢化しつつあります。透析となった原因で最も多いのは糖尿病性腎症(39.0%)で慢性糸球体腎炎(27.8%)、腎硬化症(10.3%)と続きます。やはり、生活習慣病である糖尿病が原因となることが最も多いのです。

また、透析患者さんの死因についてみると、感染症が25.9%と最も多く、心不全が20.8%と続きました。災害や事故で亡くなるのはわずか0.2%であり、決して透析患者さんに事故が多いということはありません

透析患者の日常

血液透析時には血圧の変動が起こるので、低血圧による気分不快、冷や汗、生あくびがでることがあります。また、透析時には抗凝固薬を使用するので、透析後は出血しやすい状態になります。長期に透析を行っていると、皮膚の色素沈着やかゆみが出ること、足がつることもあります。透析は週に3回ですから、その間に水分を取り過ぎないように注意すること、血液中のカリウムが上昇しないように食事を制限することが必要です。

しかし、透析以外の時間では十分に社会参加をすることが可能です。毎日、日中に勤務されて、夜間に透析治療を受けている方もいます。自動車を運転している方も多数おられます。このような透析患者さんに対しては支援制度があり、条件を満たせば身体障害者手帳を取得できます。血液透析には年間に約500万円の医療費がかかると言われていますが、高額療養費の支給制度により1カ月の自己負担額上限は1万円(上位所得者は2万円)です。

自動車運転に関するアドバイス

透析患者さんが自動車を運転して交通社会に参加されることは望ましいことです。透析を受けているということだけでは、運転に際して法的制限はありません。しかし、前述のように、透析患者さんには様々な合併症がみられます。ある調査によると、毎日あるいは時々めまいを自覚する人は透析患者さんの32%でした。また、透析後に血圧が低下して、立ちくらみを起こす人もいました。したがって、透析患者さんは自動車の運転に注意しなければなりません。

具体的なアドバイスとして、まず、体調が悪いときは無理に自動車を運転しないことが重要です。次に、透析を受けた後に自動車を運転する場合には、十分に休んでから運転することです。万一、外傷を負ってしまった場合には、血液が止まりにくいことがあります。以前、二輪車を運転して血液透析に通っていた方が帰路で転倒し腹部を打撲されました。大きな損傷ではなかったのですが、腸間膜損傷による出血で死亡しました。特に二輪車の運転は避けたほうがよいと考えます。これが、血液透析患者さんへの安全運転のアドバイスです。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top