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細菌培養液の成分改良の過程は?

No.4969 (2019年07月20日発行) P.60

佐々木雅一 (東邦大学医療センター大森病院臨床検査部主任)

舘田一博 (東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授)

登録日: 2019-07-19

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この40年程度で,一般的な医療施設の検査室において,種々の臨床材料から細菌培養を行う際に使用する培養液の成分構成には,有意な改良が加えられたと思われます。その成分改良の内容についてご教示下さい。東邦大学・舘田一博教授にお願いします。

(兵庫県 T)


【回答】

【自動化と血液培養ボトル内容液の改良により感染症診断時間が短縮し,検出率も向上した】

細菌培養液とのことですので,液体培地の中で重要かつ広く一般的に利用されている血液培養ボトルについてお答えします。

感染症診断になくてはならない血液培養ボトルですが,ここ数十年で「自動化」と「ボトル内容液の改良」が進みました。この2つの点について解説したいと思います。

血液培養などに利用される液体培地は,細菌増殖に伴い混濁することで菌の発育を知ることができますが,濁度確認による検知が困難な場合があるため,培養液を抜き出して顕微鏡検査で確認したり寒天培地に培養して菌の発育を確認する必要があります。寒天培地への接種作業を簡略化するため,液体培地と寒天培地を組み合わせた血液培養ボトルが登場し,寒天培地に形成されるコロニーから菌の発育を確認できるようになりました。また,液体培地に菌が増殖する際の内圧上昇を利用して菌の発育を目視で検知できるものも登場し,利用されています。

このように肉眼での観察が必要な血液培養ですが,1968年に血液培養自動機器が登場し,幾多の改良を経て広く利用されるようになりました。初期の自動機器では,培地成分に放射性物質を利用していたことから国内には導入されませんでしたが,後にボトル内で増殖した細菌によるCO2産生やO2の消費をモニタリングするもの,菌の増殖による内圧変化をとらえる検知システムを利用した自動機器が登場しました。それらはボトルを装塡している間は10分程度の間隔で測定を実施することから,リアルタイムでの細菌検出報告が可能となり,人間の目視を必要とする用手法に比べて検出時間が大幅に短縮できるようになりました。現在ではこれらの自動機器は国内においても広く普及しています。

続いてボトル内容の液体培地についてお話します。血液培養に利用される液体培地としてブレインハートインフュージョンやチオグリコレート,トリプチケースソイなどを基礎培地としたものが利用され,1970年代には培地組成の基本が確立されました。その後,細菌検出率向上のために,いくつかの点で改良が行われてきました。

ひとつは抗凝固剤です。血液が凝固してしまうと,その中に細菌が取り込まれていた場合は検出が困難となるため,抗凝固剤は必須成分とされます。しかし,多くの抗凝固剤は細菌の発育阻害効果が認められることから,血液培養に適した抗凝固剤の研究が行われ,ポリアネトールスルホン酸ナトリウム(sodium polyanethole sulfonate:SPS)が発育阻止作用の少ない抗凝固剤として結論づけられました。SPSは,アミノグリコシド系抗菌薬の失活,リゾチームの中和,補体活性化経路の阻害作用などを有しており,現時点では理想的な抗凝固剤として利用されています。

細菌の発育を抑制してしまう原因のひとつに抗菌薬の影響があります。血液培養に限らず,培養検査の基本として抗菌薬投与前に検体を採取することが求められますが,実際問題として抗菌薬投与後に培養検体を採取することも多く,感染性心内膜炎をはじめ,感染症治療の血液培養陰性化確認などは抗菌薬投与中であることが前提となります。そのため抗菌薬による発育阻害を防止することを目的に,1980年代頃から抗菌薬を吸着する合成樹脂や活性炭,ポリマービーズなどを添加したものが開発されました。これらの添加により,細菌検出率の向上だけでなく検出時間の短縮効果が得られるようになりました。

簡単ではありますが,ここ数十年の血液培養における培養液についてお話をさせて頂きました。

【回答者】

佐々木雅一  東邦大学医療センター大森病院臨床検査部 主任

舘田一博  東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授

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