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オープンイノベーションについて[特集:医療の近未来予想図]

No.4958 (2019年05月04日発行) P.47

中路重之 (弘前大学大学院医学研究科 社会医学講座特任教授)

登録日: 2019-05-04

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  • 70歳も見えてきた老兵が話す資格もないのかもしれないが、最近はやりのオープンイノベーションについて一言述べたい。

    健康も病気も複雑怪奇な成り立ちをしている以上、それを正しく語ろうとしても、結局は多種多様なデータ、考え方、アプローチなどに依拠しなくてはならない。

    オープンイノベーションとは異分野との横のつながりを充実させて、より大きな力を得て目的地まで到達させようという作業である。これは健康に限ったことではなく、極端に言えば人間が社会的動物である限りそれを取り巻く森羅万象すべてにも通じる。

    しかし、他分野の人間が少ない時間に会議室に集まり意見交換するだけでは目を見張るものは生まれがたい。アンダーワンルーフで集結し、人として長く接し、ともに汗を流すことで本当のイノベーションが生まれる。これはきわめて重要であるにもかかわらず、スポーンと見過ごされがちなことである。

    弘前大学COI(center of innovation)拠点は6年前から文部科学省、JST(科学技術振興機構)の支援を受けて、青森県の短命県返上を目標に、産官学民を巻き込みながら活動を展開してきた。

    社会イノベーションなくして国民の健康向上なし―であるから、それを起こすための産官学民の強い連携は必須であり、言い換えればオープンイノベーションなくしてその達成は困難である。

    ただし、そこには大きな壁が存在する。それは、産官学民のinterestが異なることである。企業のinterestは収益、大学は研究、自治体は地方創生・経済活性化・医療費抑制・少子化対策、市民はとりあえず自らの健康である。これら異なった向きのベクトルを束ねて前進しないかぎりオープンイノベーションはないし、短命県返上もない。

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