今あなたの子どもが、神経性食思不振症に侵されたとしよう。腕はやせ細り、自傷の跡に溢れ、会話は途絶し、死亡率が10%とも言われる深刻な病態である。児童精神科を受診するも、発症を繰り返す日々。現代の若年層のコミュニケーションの中心であるSNSを介して、他者の価値観が否応なく流入し、協調を強いられる毎日。
想像してほしい。
親としてのあなたは血眼になって、あらゆる手立てを講じようとするのではないだろうか? インターネットを通じて同じ事例や解決策の検索に明け暮れるであろう(connected & shared)。所属する学校への介入を考えるかもしれない(community-assisted)。芸能人にその思いを託したり、教材開発や、SNSからの過剰な同調圧を抑えるためのアプリ開発に乗り出すかもしれない(integral-disciplinary)。三人称としての立場であれば、誰もが一度は医師として経験したことのあるケースでも、立場が二人称、一人称へと転じただけで、既存の医学体系から答えを導くのがきわめて難しく感じてしまう。それどころか、テクノロジーの画期的進歩がもたらした現代社会においては、多くの患者やその家族は、莫大な選択肢の渦の中から難しい決断を迫られてしまっている。
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