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医療へのAI導入による医師の働き方の変革と、ライフコースデータを軸とした新しい医学研究の振興[特集:医療の近未来予想図]

No.4958 (2019年05月04日発行) P.32

川上浩司 ( 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻教授/健康・医療・教育情報評価推進機構(HCEI)常務理事)

登録日: 2019-05-02

最終更新日: 2019-04-25

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  • 今後の20年で、医療の環境、医師の働き方や役割は大きく変貌すると考えています。人口の減少や予防医療の進化は、患者数そのものの減少を招きます。すると、人口比の医師数は過剰となります。そのように医師が余るような状況になり、さらに、現在はきわめて遅れている医療現場を取り巻くIT環境の進歩やAIの導入が今後進むことによって、たとえば、AI診療補助システムによってエビデンスに基づいた鑑別診断の提示、診療方針、クリニカルパスの運用などが実施されるようになり、医師にとっては合理的な働き方となるでしょう。一方で、そのような環境下では、医師の能力や治療行為には差がつきにくくなります。するとどのように医師の差別化が起きるでしょうか。

    私は、9割の医師は、診療補助システムの恩恵により的確なエビデンスに基づいた医療行為に差がつかない中で、患者に寄り添って背中をさすることができる医師こそが重要視されるのではないかと思っています。まさに赤ひげの時代の再到来です。残りの1割の医師は、そのようなAI診療補助システムへのEBMのためのエビデンスの取り込み、アルゴリズム作成、他のシステムとの連携など、大多数の医師たちの医療の根幹を支えて、生み出すような役割を果たすのではないかと思うのです。当然のことながらエビデンスとは疫学研究に基づくものですから、疫学の知識があり、そしてITのリテラシーがありプログラム開発などのSEとしての能力も兼ね備えた医師こそが、医療の中心として支配的に活躍する時代が来るであろうと考えています。

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