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お雛さんを買いに[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(240)]

No.4948 (2019年02月23日発行) P.63

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2019-02-20

最終更新日: 2019-02-19

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節句人形は嫁の実家が贈る習わしらしい。30年以上前だが、妻の実家からびっくりするほど大きな七段の雛飾りをもらった。現金の方がうれしいけどなぁ、と思わず口走って叱られた。懐かしい思い出だ。

初孫は男の子だったので、初節句に銀の兜を贈った。というと高価に聞こえるかもしれないが、手のひらサイズの小さなもので、その時はネットで選んで購入した。

昨年末に2人目、女の孫が産まれた。面倒だし、今度もネットでと思った。が、ちょっと検索しただけで、雛人形は顔立ちや衣装、サイズなどが千差万別。これは実物を見ねばなるまいと、松屋町へ赴いた。

大阪人は「まつやまち」ではなくて「まっちゃまち」と発音する。世界的にもこんな通りはないだろう。道の両側に何十軒もの人形屋さんが並んでいる。この時節はもちろん雛人形一色である。

とりあえず駅の近くの大きなお店に入った。見るからに何もわかってなさそうな爺と婆である。カモが到来と思われたのだろう、お店のおじさんが張り付いてくる。

いまや住宅事情から、七段飾りはほとんど売れないらしい。娘夫婦もマンション住まいで大きなセットなど飾れないから、狙いは2人飾りである。これとて、値段はピンキリだ。

並べてあるのを比べると、顔立ち、造り、着物など、素人目にも高価な物の方がよく見える。しかし、正札を見ると、いいものは予算をはるかにオーバーしている。

お店のおじさんが耳元で囁く。「この数字は百貨店価格で、うちは大きく値引きします」とか、「今日は採算を度外視で、多売することになってますから超お得です」とか。

電卓でこっそりと割引価格を教えてくれる。さすがはプロである。心を見透かされたかのように、予算の上限ちょうどくらいが提示されて、即決。しかし、値段が妥当かどうかなど全くわかりませんわな。

もっといろんな店を見て回って比べたほうがよかったのかもしれない。が、そのおじさんによると、即決されないお客さんは迷い続けられて大変なだけです、とのこと。

とても楽しいお買い物だった。お雛さんを買うのは孫のため、ではなくて、孫に楽しませてもらっているのかもしれない。その割にはお金がかかりすぎるのが問題ですけど、まぁよしとしておきましょう。

なかののつぶやき
「我が家では、2人の娘が嫁に出て行ったいまでも、毎年、豪華な七段飾りのお雛さんを飾りつけます。まぁ、虫干しですね。大阪は、神さま仏さまではなくて、神さん仏さんと呼ぶような土地柄ですから、お雛さまよりお雛さん。呼び方としては、その方が親しみがあってええように思いますけど、どうですやろ」

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