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千葉大学附属病院主催「ちば医経塾」の塾生として[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.37

池田幸穂 (東京医科大学名誉教授)

登録日: 2019-01-03

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昨年3月末、14年間お世話になった東京医科大学を定年退職いたしました。先輩教授から「定年退職後の10年間は現役と変わらず活動ができること、また退職後の生き方が、その人の価値を示すが、現実には自分の信念を貫き、持てる力を十分に発揮できるものは、ごく少数に限られているのが現状である」と申し伝え聞いていました。「定年退職」の「リアル」と向き合いながら、ベストセラーとなった3冊の本に接しました。『定年後』(楠木 新著)、『未来の年表』(河合雅司著)、『人生100年時代の人生戦略―ライフ・シフト』(リンダ・グラットン、他著)。

私が所属する日本脳神経外科学会のスピリットが「生涯教育」を謳いあげていますが、一般社会は「人生100年時代」を迎えて、「学び直し」(リカレント教育)の重要性が強調されています。在職最後の3年間、東京医科大学八王子医療センター病院長を務めさせて頂きました際、病院経営・DPC分析等でご指導頂いた井上貴裕教授(現・千葉大学附属病院副院長、「ちば医経塾」・塾長)から全国に先駆けて病院経営のスペシャリストを育成する「ちば医経塾」を立ち上げる情報を頂きました。全国から塾生を公募し、また、年齢制限はないとのことでした。病院長時代に断片的には医療経営の勉強をする機会はありましたが、系統的にはありませんでした。機会があれば、系統的に医療マネジメントの勉強をしてみたいと思っていました。私にとっては、「学び直し」(リカレント教育)と解釈して応募しました。採用された塾生は22名で、病院長を含む医師・看護師長・放射線技師長・病院事務幹部・製薬会社・建築会社・市議会議員・銀行員など、多彩な職種の方が北海道から九州・沖縄まで、全国から参加されました。隔週の日曜日開催・講義時間・講義資料等、最年長の私にとっては、かなりヘビーな内容でしたが、医療マネジメントの多様性を実感した貴重な体験となりました。

この間、東京医科大学に医療コンサルタント介入に端を発した大きな不祥事が生じました。現在、東京医科大学全体の体制の「仕切り直し」が進められています。一方、大学病院を含めて、どの医療機関も収支改善は喫緊の課題であり、そのため医療経営コンサルタントの介入があり、その傾向が昨今、加速かつ乱立している印象すらあります。

「ちば医経塾」参加を通して感じたことは、やはり自院の組織内から医療マネジメントに精通した優秀な人材を愚直に育成する必要があり、また、外部の医療コンサルタントを依頼する際、自院の補完しなければならない目的を明確にして、採用した医療コンサルタントの継続的な実績の検証も重要であると考えます。

まさに「学び直し」と「仕切り直し」に揺れ動いた定年退職後の1年余りとなりました。

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