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世界のへき地から[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.77

齋藤 学 (ゲネプロ代表)

登録日: 2019-01-05

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突然、女性が診療所に駆け込んできた。「こどもの意識がないから早くきて!」往診カバンを肩にかけ、すぐに白馬に飛び乗った。見渡す限りの大草原の中を、遙か向こうのゲルに向かってひた走る。モンゴルの往診風景である。

オーストラリアの北、トレス海峡に浮かぶ木曜島病院。ヘリコプターで妊婦が搬送されてきた。すぐに手術室に運び込まれ、麻酔がかけられ、帝王切開が始まった。パプアニューギニアからの患者だった。周辺離島には2週間に1度、ヘリコプターで回診に出向く。

「夜の往診は漁船よ。オーロラ?もちろん見えるわよ」ノルウェーの北極圏に位置するトロムソの離島で働く女性医師。耳鼻科医だったが、田舎が好きで、家庭医療を学び直した。2年前には「ドクターコトー」のモデル、瀬戸上健二郎先生に会いにきた。

「空を飛んだり、海に潜ったり、救急車に乗ったり……。私の働く場所はどこなんだろうと思うけど、でも救急医がいないから仕方ないわ。アドレナリン?出るわよ、そりゃあ」とは、スペインの離島で働く家庭医。

「まずはタスマニアで寒冷地トレーニングしてからよ。雪かきがメインだけど、手術室もあるし、テレメディスンもあるから、安心だわ。今回で南極は2回目。医師は2人しかいないけど、歯を抜くトレーニングも受けたし、なんとかなるわよ」。

「南極なんて、まだそんなこと言っているのか。俺は、火星で闘える医師を育成しているぞ。NASAと一緒にな。世界で一番のへき地は宇宙だよ、宇宙!」。
世界の離島やへき地を見て回って直接に聞いた話である。世界には様々な医師がいて、それぞれ守るべき地域があり、見ている景色もまったく異なる。地平線、水平線、オーロラ、海中、大雪原、そして宇宙。先日ソウルで行われた学会で、バングラデシュとネパールの医師と食事をしていて、お互いの夢の話になった。「それは、すべての国民が同じ医療が受けられるようになることさ」。世界中のどこで働こうとも、同じ夢をみる。医師という職業は、本当に不思議だ。

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