株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

サルコペニア診療ガイドライン[ガイドライン ココだけおさえる]

No.4928 (2018年10月06日発行) P.48

佐竹昭介 (国立長寿医療研究センターフレイル研究部/老年内科)

荒井秀典 (国立長寿医療研究センターフレイル研究部/老年内科病院長)

登録日: 2018-10-05

最終更新日: 2018-10-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 主な改訂ポイント〜どこが変わったか

    1 サルコペニア診療ガイドラインでは,AWGSによる診断基準を用いることを推奨している

    2 AWGSの診断基準では,握力は男性26kg未満,女性18kg未満の場合に筋力低下ありと評価し,歩行速度は0.8m/秒以下を身体機能低下ありと評価する

    3 AWGSの診断基準では,骨格筋量はDXA法,またはBIA法のいずれかを用い,前者(DXA)を用いた場合は男性7.0kg/m2未満,女性5.4kg/m2未満を骨格筋量の減少ありとする。後者(BIA)を用いた場合は,男性はDXA法を用いた場合と同じ値をカットオフ値とするが,女性では5.7kg/m2とDXA法よりもやや高い値になっている

    4 サルコペニアの発症予防には,1日に適正体重当たり1.0g/kg以上の蛋白質摂取と,高い身体活動および1日の活動時間を多くすることを推奨している

    1 総論

    サルコペニアの定義や診断方法については,今もなお世界的に統一されておらず,研究グループや団体において異なった基準や分類がされている。このため,本ガイドラインでは,それらをふまえた上で,Asian Working Group for Sarcopenia (AWGS)の診断基準に基づくアルゴリズムを用いることを推奨している(図1)1)。そして,診断に必要な筋力測定や歩行機能評価についても,標準的な測定方法を具体的に示している。

    サルコペニアは,加齢のみが原因となる一次性サルコペニアと,身体活動性の低い生活習慣や食習慣・栄養問題,または疾患に関連する二次性サルコペニアに分類されている(表1)2)。一次性サルコペニアは65歳以上の高齢者を対象とし,二次性サルコペニアは必ずしも年齢区分を設けていない。高齢社会の中で各診療科医師に求められるのは,疾患に伴うイベント発生の予防や管理のみならず,(二次性)サルコペニアへの進行を予防する疾患管理や生活管理である。ただし,高齢者では多くの原因や危険因子を合併しているため,多面的・包括的な評価に基づいて対策を検討する必要がある。

    本ガイドラインは,これまでの文献を体系的にレビューして作成されているが,サルコペニアの分野において科学的な吟味が十分になされているエビデンスはまだ少ない。そのため予防や治療方法の推奨は弱く,今後,科学的な精度の高い研究が必要とされていることが明確となった。

    残り2,687文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top