この古いX線写真は、今から20年近く前に診療していたリウマチ患者さんのものである。「先生、この手…。痛いのよ。どうしたらいいの?」彼女は外来のたびにこう訴えた。生物学的製剤のない時代、メトトレキサートが奏効しない患者さんの運命は過酷だった。確たる有効な手だてを持たぬまま、僕は半ば苦し紛れに、生理学、免疫学の知識を総動員して、あらゆる治療手段を試み、せめて生命をながらえてもらおうと、合併症の早期発見に努めた。
それから数年、生物学的製剤の登場は、関節リウマチの治療学に革命をもたらした。関節リウマチは早期に寛解させるべき疾患となり、このX線写真のような高度骨破壊は激減した。かつては当たり前だった二次性アミロイドーシスも稀な合併症となった。
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