B型WPW症候群ではKent束が右房~右室間にあるのでV1から見るとδ波は電極から遠ざかる方向となり,左脚を伝わってきた通常の興奮と一緒になって陰性のR波を形成するといいます。
しかし,通常伝導の右脚を伝わってきた興奮はV1に向かうため,心電図上は右脚を伝導してきた興奮のようになるのではないでしょうか。ご教示下さい。
(高知県 F)
【左室の筋肉量の多さから,V1は深いS波,V6は高いR波となる】
図1にB型WPW症候群の典型例の心電図を示します1)。B型のWPW症候群においては,Kent束を介して,まず右房─右室基部からやや前方の右室心尖部へと初期興奮が進むため,δ波はV1─V6誘導では陽性になります(図2①)。
それに続いて房室結節由来の右脚と左脚の興奮がほぼ同時に進み,右室内でKent束由来の興奮と衝突することになります(図2②)。
しかし,左室は右室に比較し筋肉量が圧倒的に多いため,V1では深いS波となり,V6では高いR波となります(図2②)。
余談ですが,通常の心電図においてもV1の最初のR波は心室中隔の左側から右側への興奮を反映しており,続いて右脚および左脚由来の両心室の興奮を反映し,筋肉量の差から深いS波となります。
【文献】
1) Arruda MS, et al:J Cardiovasc Electrophysiol. 1998;9(1):2-12.
【回答者】
永嶋孝一 日本大学医学部循環器内科
渡邉一郎 日本大学医学部循環器内科教授