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(2)腎臓の立場から[特集:脳−心−腎連関と認知症]

No.4927 (2018年09月29日発行) P.35

三島英換 (東北大学病院腎高血圧内分泌科)

清元秀泰 (東北メディカル・メガバンク機構地域医療支援部門教授)

登録日: 2018-10-01

最終更新日: 2018-09-26

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慢性腎臓病(CKD)は脳血管疾患発症のリスク因子であり,GFRの低下に加えてアルブミン尿も認知症発症の強力な独立危険因子である

動脈硬化によるアルブミン尿は腎臓のstrain vesselの血管障害を反映しており,脳を含む全身の細小血管障害のマーカーでもあるため,脳小血管病進行のリスクとなる

CKD患者における血中尿毒素の蓄積は心血管疾患への悪影響に加えて,認知機能低下にも関連する

1. CKDが及ぼすリスクについて

慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は,高血圧,糖尿病,糸球体腎炎などを背景として糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)の低下や尿蛋白などの腎機能障害の所見が慢性に続く状態である。CKDは末期腎不全のリスクとなるだけでなく「心−腎連関」を介して心血管疾患発症のリスクとなることが既に広く知られている1)。さらに,CKDは脳血管疾患発症のリスクにもなるため2),近年では「脳−心−腎連関」が提唱されている。本稿では,このCKDの観点から脳−心−腎連関と認知症の関係について論じる。

2. 認知症の発症リスクとしてのCKD

まず,CKDが認知症の発症リスクとなるか,疫学的データから言及する。以前から維持透析患者では,一般人口の約3倍もの頻度で認知症が発病することが知られていた3)。しかし,CKDでは,透析に移行するはるか前の段階であるGFR 60mL/分/1.73m2程度の保存期CKDの時期から,既に認知機能低下例が増加することが報告されている。疫学研究のメタ解析では,GFR 45~60mL/分/1.73m2のCKD患者では,認知機能低下の発症が非CKD群と比してオッズ比 1.3倍,95%信頼区間(confidence interval:CI);1.01~1.72であった4)。さらに,GFRの低下に加えてアルブミン尿も,認知症発症における強力な独立危険因子であることも明らかになっている(オッズ比 1.35,95%CI;1.10~1.65)5)。また,高血圧診療に大きなインパクトを与えたSPRINT研究のサブ解析でも,同様にアルブミン尿の存在と低いGFRは,いずれもその後の認知機能低下のリスクとなることが報告されている6)。このようにCKDは認知症発症のリスク因子となるが,病型としては特に血管性認知症への影響が大きい(血管性認知症:オッズ比 1.96,95%CI;1.16~3.31,アルツハイマー型認知症:オッズ比 1.37,95%CI;1.11~1.69)5)

では,なぜCKDが認知症のリスクとなるのであろうか? この病態関係性について,①strain vesselによる血行動態的な観点と,②CKD時に体内に蓄積する尿毒素の観点から説明する。

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