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台風21号の直撃[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(218)]

No.4925 (2018年09月15日発行) P.67

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2018-09-12

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大阪はあまり天災に見舞われない町である。いや、それも去年までのことだ。今年は、6月の大阪府北部地震、7月の豪雨、そして今月の台風21号、いずれも物心ついてから初めて経験した大型の災害である。

京阪神地区はけっこう台風の通り道になる。しかし、大型台風と言われていても、多くの場合はそこへ来るまでに弱まっていて、寝ている間に通り過ぎて、なんやったんや、ということが多かった。

今度こそは違いそうだった。昭和36年の第2室戸台風以来の強さとかいう話で、前日から、鉄道の運休も含めて、要警戒の報道が繰り返しなされていた。これまではイソップの「狼少年」やったけど、いよいよ本物の到来、という気分が高まる。

はて仕事に行くかどうか、である。今回の台風は足が速いので、いつもの時間帯に通勤したら、台風が来る前に大学に着いて、去った後で帰宅できる。ちょっと迷ったけれど、朝の5時過ぎにはすでに暴風警報が出ていたので、あっさりお休みすることに。

レーダー情報をネットで逐次確認できるのが便利である。テレビのニュースとは時間差がある。ほぼ通り過ぎたのに、これからですとか言うてたらあかんやろ。

大阪有数の繁華街である道頓堀からテレビ中継されていて、命知らずの観光客がちらほらと映っていた。家から直線距離で8キロあまりしかないのに、暴風雨の状況がずいぶんと違うのが不思議だった。

こわいほどの暴風雨は小一時間ほどだったろうか。SNSを眺めていると、建築中のビルの足場が崩れるところとか、自動車が横倒しになるところとかがたくさん投稿されてきて、さすがに怖くなる。

我が家の被害は、せっかく実りかけていた栗がほとんど落ちてしまったくらいで、ひと安心。近所を見て回ると、土蔵の白壁が落ちていたり、ガレージの門柱が倒れていたり、けっこうな爪痕である。

台風一過の翌朝は視察をかねての自転車通勤。2箇所、大きな木が倒れていて通せんぼ。倒れていたのは、どちらも一本立ちの木であった。やっぱり仲間といっしょにおらんとあかん、いや、それよりも寄らば大樹か、とか考えながら走ってきた。

昔は災害で改元されることがよくあった。今回は事情が違うけれど、平成からの改元で験直しとなってほしいところである。

なかののつぶやき

「陸橋に倒れ込んでいた木、見ようによっては緑のトンネルみたいですが、そんなええもんではありません。通りを往く人はみんな写真を撮ってました」

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