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オンライン診療は医療情報をデータ化するツールになる[スタートアップ!オンライン診療(6)]

No.4923 (2018年09月01日発行) P.14

登録日: 2018-08-31

最終更新日: 2018-08-31

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2018年度診療報酬改定ではオンライン診療の保険導入が大きなトピックとなった。4月から開始した本連載ではオンライン診療に取り組む診療所の実例から、ICTを活用した医療提供のあり方について考えてきた。連載6回目は、医師でオンライン診療アプリ「curon(クロン)」を提供する(株)MICINのCEO原聖吾氏にインタビューし、オンライン診療の現状と課題、可能性について話を聞いた。



―4月に「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」などが新設(表1)されましたが、現在の普及状況についてどのように受け止めていますか。

 政府の「未来投資会議」などでの方針を受け、中医協(中央社会保険医療協議会)の議論で「オンライン診療が保険診療として認められそうだ」との気配が濃厚になってきた昨年末あたりから機運が高まり、改定前にオンライン診療のサービスを導入される医療機関がぐっと増えました。診療報酬上でオンライン診療が定義されたことはとても大きなメッセージであると考えています。
一方で算定要件が厳しく、実際に診療している先生からは「この点数では割に合わない」という声があるのも事実です。改定前の盛り上がりに比べるとやや落ち着き、踊り場に出たといった印象です。

―実際の医療現場でオンライン診療はどのように活用されているのでしょうか。

 大きく分けて3つのパターンがあります。1つは今改定での保険適用を受けて、主に高血圧症や糖尿病といった生活習慣病領域の疾患を対象としているケースです。クロン(https://curon.co/)では検査機器と連携しており、さまざまなヘルスデータをモニタリングしながら医学管理を行うことができます。
次に自由診療として行われているケース。AGA(男性型脱毛症)の治療やセカンドオピニオン、カウンセリングなどに活用されています。これらは診療報酬改定の影響がなく、むしろニーズは高まっています。
3つ目は、もともと「電話等再診」として遠隔で診療が行われていたものです。例えばアレルギー疾患で症状は安定しているものの継続的に治療が必要な患者さんが、電話等再診で処方薬を受け取るという形です。ただ今改定で、以前から3カ月以上電話等再診を行っていた患者さんだけが算定対象という要件が設定されたため、今後は減少していくでしょう。

約700施設の医療機関がクロンを導入

―「クロン」は現在何施設くらいの医療機関に導入されているのでしょうか。

 約700施設です。オンライン診療のサービスを提供している企業は数社ありますが、今改定であまり高い点数が設定されなかったことが、個社としては有利に働いている部分もあると感じています。
私たちは、医療データを解析することで、個人の健康状態から将来の病気の可能性を予測し、人々が納得感を持って医療を受けられる社会の実現を目指しています。オンライン診療には、患者さんの利便性が高まることで、治療の継続性やアウトカムの向上につながるという効果もありますが、オンライン診療を通じて得られる医師と患者のやり取りなどの医療情報がデータ化できるというメリットも価値としては大きいと思います。そのためクロンでは、導入ハードルを下げるため、医療機関側に初期費用や月額利用料といった費用を設定していません(表2)。



現行の点数や施設基準では、一定の初期投資に加え、継続的にランニングコストが発生してしまうと、よほど多くの患者さんをオンラインで診療しない限り、採算を取ることはかなり難しいでしょう。ただ一度診療を始めてしまえば、患者さんがいる以上、赤字であっても簡単に止めることはできません。患者さんのニーズ自体は増えてきているので、より少ない負担で運用できるオンライン診療サービスという視点から、クロンにスイッチされるケースも相当数あるようです。

医師の裁量による診療を可能にすべき

―次期改定ではオンライン診療料などの算定要件の見直しが1つのトピックになると思いますが、ポイントについて教えてください。

 保険診療として明確に定義され、国から中長期的にしっかりと進めていくという強いメッセージが示された意義は大きいと思います。患者さんにとっては、オンラインという選択肢が用意されているに越したことはありません。ただ現行の算定要件が厳しく使い勝手が良くないことは事実です。
例えば、初診から6カ月間は対面診療をする必要がありますが、オンライン診療を求めている人には外来に通うことが難しいケースもあります。対面診療の間隔が最大で3カ月以内という要件についても、一定の計画下であればそこまで厳格にせず、医師の裁量に基づき、もう少し緩やかな運用ができるような形に変えてみてもいいのではないかと感じています。

―対象疾患(表3)の拡大についてはどうでしょうか。

 アレルギーや皮膚科の疾患など、医師と患者の間である程度「毎回対面でなくても大丈夫」という認識が共有されている領域については、保険診療の対象となるように見直しを検討していくべきです。すでに診断がついていて、症状がある程度安定している場合には、ビデオ通話でも十分代替可能だと思います。
オンライン診療のニーズがとても高いと感じるのは、子育て世代の女性です。小さいお子さんを連れて医療機関に通院することは難しく、体調が悪くても自由診療の健康相談などに流れていってしまうケースがあるようです。医師にとっても健康相談という曖昧な立ち位置のため、本当は薬が必要でも処方箋が出せないというジレンマがあります。こうしたニーズを把握し、実態に即した仕組みに整備していくことが課題だと思います。

かかりつけ医をサポートするツールに

―今後オンライン診療はどのように進化していくと考えていますか。

 クロンでも進めていますが、いろいろなデータをモニターできる検査機器との連携が重要になると思います。医師と患者さんがより多くの情報を共有するようになれば、診療の幅も広がり、患者さんも安心感を持ってオンライン診療を受けることができるようになるのではないでしょうか。
また少し先の話になりますが、医師をクリニカルな面でサポートできるようになっていくと思います。オンライン診療では、「こういう症状の患者さんにはこの薬が使われている」といったデータが蓄積されていきます。患者像が多様化していく中で、かかりつけ医の先生がすべての疾患をカバーするのは難しい。日々の診療をサポートするツールとしてクロンを活用してもらえるよう、機能を充実させていきたいと考えています。

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