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ライム病

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-19
橋本喜夫 (旭川厚生病院皮膚科診療部長)
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  • ■疾患メモ

    マダニ刺咬症によって媒介される全身性感染症で原因菌はライム病ボレリア(スピロヘータ)による。マダニ刺咬症後数日~2週間後に刺咬部を中心に拡大する紅斑(慢性遊走性紅斑;ECM)と,それに伴う発熱,関節痛,全身倦怠感などを伴う。

    わが国の媒介マダニはシュルツエマダニで,北海道,本州中部,標高700m以上の山岳地帯に生息する。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    ライム病の症状は早期(Ⅰ,Ⅱ期),後期(Ⅲ期)に大別され,以下に概説する。

    〈Ⅰ期(局在期)〉

    慢性遊走性紅斑(erythema chronicum migrans:ECM)はマダニ刺咬部から紅斑性丘疹で始まり,周辺に紅斑が拡大する。易疲労感,発熱,筋肉痛,頸部痛などの症状を伴ったり,関節痛,リンパ節腫脹もみられることがあり,約4週間続く。

    〈Ⅱ期(播種期)〉

    ECMが多発性にみられたり(二次性遊走性紅斑),皮膚リンパ球腫(結節性病変),循環器症状としてA-V blockや心膜炎などが稀にみられる。また顔面神経麻痺,神経根炎,髄膜炎などもみられ,数週間から数カ月続く。

    〈Ⅲ期(慢性期)〉

    数カ月から数年にわたり,慢性萎縮性肢端皮膚炎(acrodermatitis chronica atrophicans:ACA),慢性の髄膜炎,視神経委縮,大関節の腫脹と疼痛を伴った慢性関節炎がみられる。これらⅠ~Ⅲ期の症状が順番に出現せずに,いきなりⅡ期の症状(顔面神経麻痺)が発症することもあるが,後に詳細な病歴をとるとECMが存在していたことが発覚することもある。

    欧米でもECMの出現頻度は当初は50~70%と言われていたが,患者教育とライム病の診断を厳格化することで,その頻度は90%に達すると言われている。

    わが国でもECMの出現率は高い。

    【検査所見】

    現在保健内検査が施行不能なので,ライム病ボレリア抗体の血清診断;イムノブロット法による抗ボレリアIgM,IgG抗体の検索を国立感染症研究所細菌部に依頼して施行可能である。

    CRP陽性や,白血球増多,赤沈亢進など炎症所見が得られやすい。関節炎や関節痛が強い場合は抗核抗体や,RA因子の検索など慢性関節リウマチや他の膠原病の鑑別が必要になることもある。顔面神経麻痺や,髄膜刺激症状がある場合は髄液検査の必要性も出てくる。

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