株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

新しい頭痛発症抑制薬「抗CGRPモノクローナル抗体」による片頭痛治療─フレマネズマブ発売後早期のリアルワールドデータ(3カ月投与も含めて)[学術論文]

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • prev
  • 5. フレマネズマブの無効例,投与中止例の検討

    無効例(変化なし)は17例(20.0%)でみられ,先行の薬剤と同様にCGRP関連抗体薬では一定数の無効例が存在することが示唆される。無効例のうち10例は切替例であった(表3)。

    他薬剤からの切替群のうちフレマネズマブが3剤目であったのは3例で(表2),1例はやや有効,2例は無効であった(表3)。すなわち,2例においては,3剤すべてのCGRP関連抗体薬での無効が確認された。このような症例では片頭痛診断の再確認が必要であり,対応方法は今後の検討課題である。

    12例(13.8%)においてフレマネズマブの投与を中止している(表4)。そのうち,効果不十分による中止例は9例で,そのうち5例はブランドを変更し(エレヌマブ4例,ガルカネズマブ1例),4例は投与を中止した。2例は6カ月でいずれも有効な効果が得られ,希望により休薬している。1例においては原因が不明であるが,投与後に前兆の回数が増加したため,主治医の判断で中止された。1例は来院がなく,経過不明である。

    ほかに,有害事象として1例で便秘,1例で倦怠感がみられたが,軽微であり,投与中止には至っていない。

    6. フレマネズマブの3カ月投与例の検討

    フレマネズマブの225mgシリンジによる3カ所同時の皮下注射は,4週ごとの皮下注射と同様の有効性が示されている。3カ月投与された症例は6例(表5)で,4月中にさらに2例が投与された。6例中4例はEM患者であった。EMでは緊張型頭痛様の頭痛がみられないので,担当医が薬剤の有効性を判定しやすく,患者に3カ月投与を勧めやすいことが,EM患者の割合が高いことの要因のひとつであると推察される。患者の4例は1カ月製剤での有効性が確認されてからの変更例で,2例は前投薬終了後にフレマネズマブの3カ月投与への変更が行われている。最初から新薬での3カ月投与の施行は,患者の不安感があるのではと推察された。1回の3カ月投与後に確認がとれた4例(EM患者2例,CM患者1例,CM/MOH患者1例)では,3カ月時点での薬効の減弱はみられなかった。


    片頭痛は20~40歳代の就労世代や子育て世代に多く,通院時間の確保が困難である。フレマネズマブの3カ月投与は,通院間隔を延ばすことのできる可能性がある投与方法と考えられ,今後,3カ月投与例が徐々に増加していくと考えられる。

    7. おわりに

    フレマネズマブの特徴と発売後の使用経験を述べた。CGRP関連抗体薬はフレマネズマブが3剤目の認可であり,先行薬と同様の効果発現の早さ,MOH例を含めた有効性の高さ,安全性の高さが確認できた。片頭痛治療のパラダイムシフトが進んでおり,今後は3剤の使い分けも考慮される。フレマネズマブは3カ月投与可能という他薬剤にはない特徴を持っており,本剤の利点を活かした患者選択も必要になってくると思われる。

    【文献】

    1)Goadsby PJ, et al:Ann Neurol. 1990;28(2):183-7.

    2)Lassen LH, et al:Cephalalgia. 2002;22(1):54-61.

    3)Dodick DW, et al:JAMA. 2018;319(19):1999-2008.

    4)Silberstein SD, et al:N Engl J Med. 2017;377(22):2113-22.

    5)Ferrari MD, et al:Lancet. 2019;394(10203):1030-40.

    6)Sakai F, et al:Headache. 2021;61(7):1102-11.

    7)Sakai F, et al:Headache. 2021;61(7):1092-101.

    8)Sakai F, et al:Drug Saf. 2021;44(12):1355-64.

    9)厚生労働省:最適使用推進ガイドライン フレマネズマブ(遺伝子組換え). 2021.
     https://www.pmda.go.jp/files/000242836.pdf

    10)日本頭痛学会:CGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版). 2021.
     https://www.jhsnet.net/GUIDELINE/CGRP/6.pdf

    11)團野大介, 他:医事新報. 2021;5092:34-7.

    12)菊井祥二, 他:医事新報. 2022;5124:39-43.

  • prev
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top