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外来処方制限の撤廃における降圧薬,糖尿病治療薬,睡眠薬の取扱い

No.5218 (2024年04月27日発行) P.52

今井 靖 (自治医科大学附属病院薬剤部部長/薬理学講座臨床薬理学部門教授)

登録日: 2024-04-24

最終更新日: 2024-04-23

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外来処方で,これまで処方日数は90日分が限度でしたが,これが撤廃されたようです。降圧薬や糖尿病治療薬は120日分とか150日分の処方ができるのでしょうか。また,睡眠薬は30日分処方できるのでしょうか。
法的な解釈も併せてご教示下さい。(東京都 F)


【回答】

【現実的には90日分を上限として対応することが多いと思われる。また,患者の状況に合わせてリフィル,あるいは分割調剤なども活用することを考慮する】

日本の医薬品の外来処方における日数制限は,医療機関における遵守されるべき規則やガイドラインによって異なります。2024年時点での法的な規定に基づくと,一般的には以下のような制限がありますが,地域や施設によって異なる場合があります。

降圧薬や糖尿病治療薬などの慢性疾患に使用される薬剤に関しては,90日分の処方制限が一般的でしたが,一部の薬剤については120日分や150日分の処方も可能な場合があります。

ただし,これらの制限は厚生労働省や各都道府県の医薬品管理条例に基づいており,医師の裁量や診断によっても変わる場合があります。

睡眠薬は,通常は30日分が一般的な処方制限です。睡眠薬は依存性が高く,誤用や乱用のリスクがあるため,厳格な管理が求められます。そのため,一般的に短期間の処方が推奨されます。

法的な解釈に関しては,医薬品の処方や使用に関する規制は医療法や薬事法に基づいており,厚生労働省が定めるガイドラインや通知なども重要な情報源となります。医師はこれらの法令やガイドラインに則り,患者の状態や治療の必要性を考慮して適切な処方を行う必要があります。また,処方される薬剤の種類や患者の状態によっても異なるため,一般的な規定だけでなく,個々のケースに応じた適切な処方が行われるべきです。

従来,投薬量は,予見することができる必要期間に従ったものでなければならないこととし,別に厚生労働大臣が定める内服薬及び外用薬については,当該別に厚生労働大臣が定める内服薬及び外用薬ごとに1回14日分,30日分または 90日分を限度とする,とされていました。平成14年にルールが変わり,一部の薬を除いて処方日数の上限が撤廃され,医師の裁量に任されることになりましたが,90日以内として処方する医療機関が多いように思います。

なお,昨今,リフィル処方(refill prescription)が可能となり話題になりました。リフィル処方とは,処方された薬剤を定期的に継続して使用するために,繰り返し処方することを指します。たとえば,慢性疾患を持つ患者が定期的に特定の薬剤を服用する場合,医師は一定の期間ごとに処方を更新し,薬局でその薬剤を再度調剤することが可能ですが,リフィル可能な回数は3回以内と指定されています。普及しつつありますが,筆者の勤務先では患者の健康状態が把握されないまま薬剤が継続利用されることのリスクを勘案して,リフィル処方を許可しないという方針で対応しています。

なお,別のものとして分割調剤があります。分割調剤は,患者に対して薬剤師のサポートが必要と医師が判断した場合,長期処方の薬の保存・管理が困難な場合などに行われるもので,最大3回分の処方箋が発行されます。患者には薬剤の費用を分散させる利点もありうると思われます。分割調剤に際して,医師は「分割指示に係る処方箋」を併せて発行し,患者に渡します。

以上が回答となりますが,もし診療の一助となれば幸いです。

【回答者】

今井 靖 自治医科大学附属病院薬剤部部長/薬理学講座臨床薬理学部門教授

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