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(2)GLP-1受容体作動薬使用の実際,他剤からの切り替えや追加治療,良い適応とは[特集:糖尿病治療におけるGLP-1受容体作動薬の位置づけ]

No.4877 (2017年10月14日発行) P.35

戸崎貴博 (糖尿病・内分泌内科クリニックTOSAKI院長)

登録日: 2017-10-13

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  • グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬の良い適応は,①3種以上の経口血糖降下薬を内服中でもHbA1c値 7%以上の場合,②インスリン投与でも血糖コントロールが不十分な場合,③1日の注射タイミングを増やしたくない場合,である

    ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬を使っている症例は,中止してから投与する

    重篤な低血糖を避けるために,スルホニル尿素(SU)薬は減量してから開始する

    GLP-1受容体作動薬は,インスリンの代替とはならない

    1. 3種以上の経口血糖降下薬を内服中でもHbA1c値 7%以上の場合(経口薬+GLP-1受容体作動薬)

    食事・運動療法を指導し,経口血糖降下薬が3種以上に増えても血糖コントロールが不十分な場合,さらに経口薬を追加しても効果が期待できない場合は,グルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide 1:GLP-1)受容体作動薬上市前はインスリン導入が治療の基本であった。GLP-1受容体作動薬は,このような患者に,インスリンよりも低血糖のリスクが少なく内服薬より強力に血糖降下を期待できる薬剤として登場した。インスリン自己分泌能をC-ペプチド(CPR) indexなどで評価し,膵からのインスリン自己分泌がある程度残っていることを確認できれば,GLP-1受容体作動薬の良い適応となる。

    CPR indexの計算式と治療法の目安は以下の通りである。

    CPR index=空腹時CPR(ng/mL)/空腹時血糖値(mg/mL)×100

     ・<0.8ng/mL⇒インスリン治療
     ・0.8~1.2ng/mL⇒インスリン治療または経口血糖降下薬またはGLP-1受容体作動薬
     ・>1.2ng/mL⇒経口血糖降下薬またはGLP-1受容体作動薬

    2. インスリン投与においても血糖コントロールが不十分な場合(インスリン1~4回注射+GLP-1受容体作動薬)

    インスリン治療中でも高血糖状態が続いている症例や,HbA1c値を下げようとしてインスリンを増量すると頻回に低血糖を起こすような症例では,GLP-1受容体作動薬を併用すると平均血糖値を低下させ,血糖変動を小さくすることが期待できる。
    ジペプチジルペプチダーゼ-4(dipeptidyl peptidase-4:DPP-4)阻害薬よりも強力なグルカゴン抑制作用により夜間の平均血糖値を下げるが,インスリンを増量するよりも早朝の低血糖をきたしにくい。また,食後の血糖上昇において超速効型インスリンのみでは抑えきれなかったものが,GLP-1受容体作動薬の併用でコントロールしやすくなることが多い。

    頻回に低血糖を起こす場合は,原因となっている責任インスリンを減らしながらGLP-1受容体作動薬を併用することで,低血糖を増やすことなくHbA1c値を低下できる場合がある。

    肥満を合併する患者において,これ以上インスリンを増やしたくない場合は,GLP-1受容体作動薬の大変良い適応となる。それは,インスリンを増量するとさらに体重が増える恐れがあるが,GLP-1受容体作動薬を投与すると体重を増やさないだけでなく,食欲を抑える可能性もあるからである。このような効果は,同じインクレチン関連薬であるDPP-4阻害薬にはほとんど認められない。

    当院では一般にインスリン1日総量(単位)の上限は,標準体重(kg)と同量までと考えている。それ以上の投与は,肥満を助長しインスリン抵抗性を増加させるため,長期的には血糖コントロールを悪化させることにつながりやすい。

    残り4,376文字あります

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