ヒトに感染し肺炎を引き起こすクラミジアは,Chlamydia pneumoniae,C. trachomatis,C. psittaciの3菌種である。C. psittaciによる肺炎はオウム病と呼ばれ,症状が強く,人獣共通感染症であるなど,病態や対応が異なるため,クラミジア肺炎とは区別して扱われる(「オウム病」の稿参照)。C. pneumoniaeはヒトからヒトに飛沫感染し,上気道炎や気管支炎,肺炎などを引き起こすが,報告数は近年減少傾向にある。C. trachomatisは分娩時に産道感染し,新生児期,乳児期早期に肺炎を起こす。
一般的にクラミジア肺炎は,C. pneumoniaeによる肺炎を指し,マイコプラズマ肺炎と臨床的な特徴が類似しているが,マイコプラズマ肺炎よりも軽症のことが多く,発熱は軽度で,咽頭痛や鼻汁などの上気道症状を認める。クラミジア肺炎の診断は,血清診断が主流だが,鼻咽頭ぬぐい液や喀痰などを用いたマルチプレックスPCRなどによる遺伝子診断も近年用いられている。ただ,検出率はきわめて低く,検出された場合でもC. pneumoniaeは上気道に常在しているため,結果の解釈に留意が必要である。
クラミジア属は細胞内寄生菌であるため,βラクタム系抗菌薬は無効である。アミノグリコシド系抗菌薬も細胞内移行が低く,抗クラミジア活性は有さない。血清診断は結果が出るのに時間がかかるため,疑った場合には,マクロライド系抗菌薬,テトラサイクリン系抗菌薬,ニューキノロン系抗菌薬が選択肢となる。3系統いずれの薬剤も細胞内移行が良好,かつ強いクラミジア増殖抑制を示し,各種薬剤の最小発育阻止濃度(MIC)はクラミジア種間で差はみられず,現在までC. trachomatisを除いて野生株の耐性化の報告はない。
C. pneumoniaeによる肺炎は軽症例が多く,自然治癒する症例もみられるが,持続感染することが知られ,慢性閉塞性肺疾患や喘息などへの関与が示唆されているため,疑った場合には抗菌薬治療が好ましい。
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