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2029年秋、内科医Gの日常は…[特集:医療の近未来予想図]

No.4958 (2019年05月04日発行) P.35

具 芳明 ( 国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長)

登録日: 2019-05-02

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  • 2029年秋、内科医Gの持つ電話が鳴った。病棟の看護師からの報告だ。入院中の高齢患者が熱を出したらしい。かつて「総合診療医ドクターG」というTV番組があった。診断の難しい患者に対し問診や身体所見によって診断に迫るというエンタメ仕立ての番組だった。そこに出演する医師はドクターGと呼ばれもてはやされたものだった。しがない内科医Gはそんな能力など持ち合わせていないが、それでも何とか仕事を続けている。Gは鏡に向かい、最近目立つようになった白髪に軽くため息をついて病棟に向かった。

    熱が出ているのは80歳の男性、このところADLが低下してほぼすべての時間をベッド上で過ごしている。食後に痰が絡んだり咳を繰り返したりすることが多く、熱とともに酸素化が悪くなっていた。これは誤嚥性肺炎だろうかと考え、まずは診察しようとGはベッドサイドに向かった。

    何気なく病室に入ると、ブザーが鳴ってどこからともなく「手の消毒を忘れていませんか。消毒は医療従事者の義務です」と人工的な声が響いてきた。しまった、また忘れた、とGは慌てて病室から出て消毒剤を手にふりかけた。今やすべての病院で医療スタッフがきちんと手指衛生を行っているか自動でチェックされている。忘れて病室に入ろうものならこうやって警告される。Gは手指衛生を忘れがちなので、こうやって知らせてもらえるのは助かる。

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