株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

(1)インフルエンザに関連する肺炎[特集:インフルエンザ合併症にいち早く対処する]

No.4886 (2017年12月16日発行) P.28

高柳 昇 (埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科部長)

登録日: 2017-12-15

最終更新日: 2017-12-13

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • next
  • 肺炎症例ではインフルエンザ肺炎である可能性を常に考慮する

    インフルエンザ肺炎を迅速に診断する方法は,迅速診断キットでインフルエンザ感染を証明することである。迅速診断キットの感度は高くないため,陰性例はペア血清による抗体価の上昇で診断する

    入院肺炎例のガイドライン上の推奨薬はβラクタム系薬とマクロライド系薬の併用またはフルオロキノロン系薬である。インフルエンザ肺炎を迅速診断することの最大の利点は,これらの薬剤にノイラミニダーゼ阻害薬を追加投与できることである。さらに,インフルエンザが診断されれば個室管理ができ,院内感染対策上も有用である

    インフルエンザに対するノイラミニダーゼ阻害薬の有効性が証明されているのは発症48時間以内である。発症48時間以降でも,原発性インフルエンザ肺炎,混合性肺炎ではノイラミニダーゼ阻害薬の投与を行うべきであろう

    原発性インフルエンザ肺炎に対するステロイドの有効性はメタ解析で証明されていない

    1. インフルエンザ肺炎とは?─病型分類

    インフルエンザはインフルエンザウイルスによる急性の上気道感染症である。大多数の人は無治療でも自然治癒する。インフルエンザに引き続き肺炎を発症した場合,インフルエンザ肺炎と診断する。

    インフルエンザ肺炎は,実際の肺炎部位に①インフルエンザウイルスのみが感染している原発性インフルエンザ肺炎,②ウイルスと細菌が感染している混合性肺炎,③細菌感染のみの二次性細菌性肺炎,の3病型に分類される。これらの分類の原型は1957年のパンデミック(Asian-influenza)での剖検例よりなされた1)

    剖検例ではない実臨床のインフルエンザ肺炎例の病型分類は簡単ではない。臨床例での病型分類はLouriaらの1957年のパンデミック時の33例での分類法に準拠することが多い2)。この論文をもとに,臨床の現場ではインフルエンザ肺炎の病型分類は以下の通り行うのが現実的である。①インフルエンザ症状に引き続いて解熱することなく肺炎を発症した症例で,インフルエンザウイルス感染の証明以外に,各種検査で複数病原体感染が認められなかった場合に原発性インフルエンザ肺炎と診断する。②インフルエンザ症状と発熱が持続している間に肺炎を発症し,インフルエンザウイルスとそれ以外の複数病原体感染を証明した場合に混合性肺炎と診断する。③インフルエンザの発熱が改善したあとに肺炎を発症した症例で,インフルエンザウイルス感染の証明に加えて他の原因微生物が検出された場合に二次性細菌性肺炎と診断する。インフルエンザウイルス感染は証明できても,喀痰を喀出できない症例や,検査しても品質の良い喀痰が得られない場合,既に抗菌薬が投与されている場合などは分類不能と診断する。

    多くの総説は,「インフルエンザ肺炎の多くは二次性細菌性肺炎である」と記載している。これは真実なのであろうか。過去の報告では二次性細菌性肺炎の割合は3.8~40%であった1)~10)。当院のインフルエンザ肺炎210例の成績を2017年に報告した(表1)。パンデミック時の報告を除くと,1施設からのものでは最多である11)



    原発性インフルエンザ肺炎76例(36.2%),混合性肺炎71例(33.8%),二次性細菌性肺炎34例(16.2%),分類不能29例(13.8%)であった。ウイルス型はA(H3N2)香港型が48例(22.9%),A(H1N1)ソ連型が8例(3.8%),A(H1N1)pdm09が23例(11.0%),インフルエンザ迅速診断キットA型陽性のみ85例(40.5%),B型46例(21.9%)であった。ウイルス型と病型には関連があり,A(H1N1)pdm09の23例では16例(69.6%)が原発性インフルエンザ肺炎で最多であり,A(H3N2)香港型,B型では混合性肺炎が最多であった。分類不能と判定される症例は二次性細菌性肺炎例より10歳高齢であり,死亡率は有意に高かった(表2)。これは,高齢のインフルエンザ肺炎例に対しては十分に混合する細菌感染の検査が実施できなかったことを反映している。



    以上を要約すると,必ずしもインフルエンザ肺炎の大多数が二次性細菌性肺炎であるわけではなく,混合性肺炎や原発性インフルエンザ肺炎も少なからぬ頻度である。

    2. インフルエンザ肺炎の疫学

    インフルエンザの流行状況はその年によって大きく異なるが,通常わが国では1シーズンに600万~1300万人が感染すると推計されている。WHOの推計によると,毎年世界で季節性のインフルエンザにより25万~50万人が死亡している。米国の検討では,A(H3N2)香港型,A(H1N1)ソ連型,A(H1N1)pdm09によるインフルエンザ罹患者のそれぞれ1.1%,2.3%,4.0%が肺炎を発症した12)。日本人にこの統計を当てはめると1000万人がインフルエンザに罹患した年では,少なくとも11万人がインフルエンザ肺炎に罹患している。米国では人口1万人当たりのインフルエンザ肺炎での入院患者は1.5人と推計されている13)。この推計をわが国に当てはめるとインフルエンザ肺炎での年間入院患者数は約1万9000人である。わが国の推計ではインフルエンザ肺炎の年間罹患者数は約3万人である14)

    肺炎発症者におけるインフルエンザ肺炎の頻度は,米国ではライノウイルスについで2番目に高く6%13),欧州ではウイルスの中で最多で全体の9%15),当院の1032例の市中肺炎の検討では肺炎球菌,マイコプラズマについで3番目に多く,全体の9.4%を占めた16)

    これらをまとめると,わが国では毎年数万~11万人がインフルエンザ肺炎を発症し,少なくとも1万人以上が入院している,と推計される。また,市中肺炎症例の6~9%はインフルエンザ肺炎である。

    残り9,119文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    page top