よこくら よしたけ:1944年福岡県生まれ。69年久留米大卒。旧西独ミュンスター大教育病院、久留米大講師等を経て、90年医療法人弘恵会ヨコクラ病院長。99~2002年中医協委員、06年福岡県医師会会長、10年日本医師会副会長、12年から会長。17年世界医師会会長に就任
10月に日本人では3人目となる世界医師会会長に就任した日本医師会の横倉義武会長。国民の健康寿命を世界トップレベルにまで押し上げてきた日本の医療システムは世界から注目を集めている。そこで世界医師会会長としての活動や抱負に加え、年末にかけ攻防が激化する診療報酬の改定率に対する主張を聞いた。
昨年、世界医師会会長に立候補したのは、国民皆保険に代表される優れた日本の医療制度をまだ十分に整備されていない国々に広めていきたい、人々の健康や福祉の向上に貢献していきたいという強い思いからだった。
日医会長としては武見太郎、坪井栄孝両先生に次いで要職を務めることになる。重責ではあるが、人類の健全な生存のため、世界医師会の発展のために全力を尽くしていきたい。
10月に米国シカゴで開かれた総会には日本から多くの会員の先生方が出席してくださった。日本の医師の献身的な取り組みを、世界に発信できるという喜びを皆さんと分かち合うことができて、嬉しかった。
就任演説では、地域医療に力を尽くした父と母のエピソードを紹介し、「目の前に病んだ人がいれば、わが身を顧みずに尽くす」という医療の精神を日々の生活の中で学んできたことが、医師としての原点になっていると話した。
演説が終わると参加した国の医師から、「日本は経済だけの国かと思っていたが、道徳観の高い国であることが分かった」などとたくさんの賛辞をいただいた。こうした日本の医師の姿を世界に広めていきたいと思う。
1つは終末期医療のあり方。それぞれの宗教観が大きく影響する問題なので、一言で何が正しいと言うことは難しい。先日、終末期についてヨーロッパの医療関係者が意見を交わすシンポジウムが、バチカン市国で開催された。教皇庁生命アカデミーが協力していた関係もあるが、ローマ法王からもメッセージが寄せられるほど、注目度の高い会議だった。