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スタチン、ロコモ、AED…[お茶の水だより]

No.4885 (2017年12月09日発行) P.16

登録日: 2017-12-07

最終更新日: 2017-12-07

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▶スタチン、ロコモティブ症候群、AED、iPS細胞、指定難病、腫瘍マーカー、顎関節症─。これらの言葉には共通点がある。来年1月に刊行される予定の国語辞典『広辞苑第七版』で、新項目として収録される医学・医療の専門用語だ。広辞苑に収録されるのは、日常語として広く定着した言葉や社会状況を映すとされる言葉。前出の用語がそれだけ人口に膾炙した証と言えるだろう。
▶社会状況の変化は新語を生むだけでなく、意味内容を変容させ、時には既存の語を“退場”させる。流行語と化した「忖度」は、本来の「他人の心中をおしはかる」以外の「権力者の意向を先読みしておもねること」という意味で拡散した。日本遺伝学会は、遺伝における形質の表れやすさを指す「優性/劣性」が社会的な誤解・偏見を招くとして、「顕性/潜性」に言い換えることを提案した。
▶一方、社会状況に照らせば変化のない言葉もある。現行の広辞苑第六版で「医療」の項を引くと「医術で病気をなおすこと。療治。治療」とある。この記述は1969年刊行の第二版でも全く同じだ。数年前取材したある在宅医が「治癒がゴールではない緩和ケアや看取りや認知症ケアは、まだ医療とは思われていない」と嘆いていたのを思い出す。
▶「ロコモティブ症候群(ロコモ)」という概念を日本整形外科学会が唱えたのは10年前。新語の受容は早く、概念の変化の受容は緩慢だ。超高齢社会の到来と疾病構造の変化も指摘されて久しいが、まだ一般的には「治さなければ医療ではない」という理解が優勢と言える。しかし、患者の希望や苦しみに最後まで寄り添うという医療従事者の真摯な姿勢の積み重ねは、「医療」の概念を緩やかながらも確実に変容させていくことだろう。

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