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(1)頭痛と生活習慣の関係─患者指導のコツ[特集:慢性頭痛に対する生活指導─コツとその効果]

No.4882 (2017年11月18日発行) P.28

清水利彦 (慶應義塾大学医学部神経内科専任講師)

登録日: 2017-11-17

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  • 頭痛は食品,月経や睡眠などの生活習慣を含めた様々な因子と関係することが知られている

    片頭痛は食品や環境により引き起こされることが知られており,そのような要因は「誘発因子」と呼ばれている

    誘発因子は多くの片頭痛患者に存在するが,すべての片頭痛患者において共通するものではない

    片頭痛の診療において,片頭痛誘発因子が存在する場合,その対処法を患者とよく相談することが有用である

    1. 頭痛と誘発因子の関係性

    頭痛は,食品,月経や睡眠などの生活習慣を含めた様々な因子と関係することが知られている。特に片頭痛は食品や環境により引き起こされることが知られており,そのような要因は「誘発因子」と呼ばれている。

    誘発因子は片頭痛患者の60~90%に存在するとされているが1),すべての片頭痛患者に共通するものではないことも特徴のひとつとして挙げられている。また,前兆のない片頭痛のほうが,前兆のある片頭痛より誘発因子により頭痛が発生しやすいとされている。本稿では頭痛と誘発因子について片頭痛を中心に解説する。

    2. 片頭痛とは

    片頭痛は拍動性の痛みを呈し,悪心,嘔吐,光過敏および音過敏などを伴う疾患である。発作の頻度は多くの症例で月に1~2回程度で,少ない場合は年に数回,多い例で週に1回程度認められる。片頭痛は「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」に大きくわけられる。

    片頭痛では発作が起こる前に体調の変化がみられることがあり,予兆と呼ばれる。予兆の出現頻度は報告により異なるが,7~88%と報告されている1)。片頭痛発作が出現する数時間~1日または2日前に出現することが多い。予兆にはあくび,過睡眠,光または音に対する過敏性,食欲亢進,疲労感,集中困難,思考緩慢,頸部のこりなどがある。

    片頭痛における前兆は通常5~20分にわたり徐々に進展する,持続時間が60分未満の可逆性脳局在神経症状である。主なものとしては,視覚症状,感覚症状,言語症状および運動症状がある。「典型的前兆に片頭痛を伴うもの」では,前兆として視覚症状,感覚症状,言語症状のみを呈する。前兆として運動症状が出現する症例は,片麻痺性片頭痛と診断する。通常は,この前兆が終了する頃から片頭痛発作が出現する。

    片頭痛では,頭痛が始まる前に頭部の不快感に気づくことが多いと言われている。その後,軽度の痛みから徐々に中等度から重度の頭痛へと強度を増していく。この間は30分~2時間とされる。いったん片頭痛が生じると4~72時間持続する。頭痛の部位は片側のこめかみから眼周囲が多いが,両側の痛みを訴える症例もある1)

    頭痛の程度は「日常生活がとても続けられない」ほどの強さで,仕事や家事が手につかず,できれば横になりたいと感じる。ひどいと寝込んでしまうため,仕事を休んだり学校を欠席することを余儀なくされる。片頭痛発作中は悪心や嘔吐を伴うほか,光がまぶしいと感じたり周囲の音や声が響くと感じることも多い。

    その後,大部分の患者において頭痛は徐々に消退する。一部の患者では,睡眠により頭痛が改善することがある。一方,嘔吐により頭痛が消失する症例もある。特に小児では,睡眠や嘔吐が発作の終了に効果的であると言われている1)

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