株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【私の一冊】わが歩みし精神医学の道

No.4685 (2014年02月08日発行) P.76

風祭 元 (帝京大学名誉教授)

登録日: 2014-02-08

最終更新日: 2017-09-21

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

東大医学部教授内村祐之(うちむらゆうし、1897〜1980年)の70歳までの自伝。雑誌「精神医学」に1966年から20回にわたり連載され、後にみすず書房から1968年、一冊として発行された。

私の人生を導いた 優れた精神医学者の自伝

内村祐之先生は、私が医学生時代に精神医学の臨床講義を受けた恩師で『わが歩みし精神医学の道』は、先生の自伝である。

我々の人生は模索の連続であり、その歩みを導いてくれるのは、同じ道を歩んだ優れた先人の生き方である。

内村祐之先生は、著名なキリスト者の内村鑑三の長男として生まれ、大正12年に東京帝国大学医学部を卒業して精神科医の道に進まれた。

旧制一高在学中は野球部の左腕エースとして早稲田、慶応を連破した学生野球のヒーローであった。2年のドイツ留学後に帰国し、昭和2年に新設の北海道帝国大学の精神科の初代教授として、北海道で初めての精神科医療を開始し、昭和11年に母校の東京帝国大学教授となった。以後、太平洋戦争の時期をはさんで昭和33年まで22年間在職し、医学部長、第15回日本医学会会頭などを歴任された。

大学退職後はプロ野球第3代コミッショナーに就任し、3年務めた後に、「誰でも入れる精神病院」を目指して設立された神経研究所晴和病院で1980年83歳で亡くなられるまで診療と研究を続けられた。

私は学生時代に先生の精神医学の臨床講義に魅せられて中枢神経の医学的研究を志して精神科の道を選んだ。先生は北大から東大にかけて、精神医学の様々な分野の研究に取り組まれ、それぞれに優れた研究成果を挙げられた。

私も偶然に新しい大学の精神科教室の設立に主任教授として関与したが、その時にいつも私を導いて下さったのは、先生の自伝の中のいくつかのくだりであったことを思い出す。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top