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冠動脈CT血管造影法におけるnapkin-ring signの病態と急性冠症候群発症の危険性

No.4688 (2014年03月01日発行) P.60

大塚憲一郎  (大阪市立大学大学院医学研究科循環器器官病態内科学講座循環器内科学)

島田健永 (大阪市立大学大学院医学研究科循環器器官病態内科学講座循環器内科学准教授)

登録日: 2014-03-08

最終更新日: 2017-09-11

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【Q】

急性冠症候群(acute coronary syndrome;ACS)発症の危険性を。また,胸部CT上の“napkin–ring sign”の病態について。大阪市立大学・島田健永准教授に。(東京都 S)

【A】

napkin–ring signは,陽性リモデリング,低CT値プラークと同様に,冠動脈CT血管造影法における不安定プラークの特徴であり,冠動脈の狭窄度とは独立したASC発症の予測因子である

冠動脈CT血管造影法(computed tomog­raphy coronary angiography;CTCA)におけるnapkin–ring sign(プラークを取り囲む比較的高いCT値のring状の構造物)の病態とACS発症の危険性について,これまでの文献的報告を基に説明する。

ACS発症の原因となるプラークの特徴

ACSの主な原因は,冠動脈プラークの破綻である。線維性被膜で覆われた脂質コアを有するプラークが破綻し血栓が形成されることにより,冠動脈が一部,あるいは完全閉塞し心筋虚血を来す病態である。ACS発症の原因となるプラークは必ずしも高度狭窄を引き起こすとは限らず,病理学的な検討により約7割の症例においては,発症前の冠動脈狭窄度は50%以下であることが報告されている1)。これらの破綻しやすいプラークは脆弱性プラーク(vul­nerable plaque)と呼ばれ,①薄い線維性被膜および大きな脂質コアを有する偏心性プラーク(thin–capped fibroatheroma;TCFA),②炎症細胞の集簇,③陽性リモデリング,④spottyな石灰化の存在,などが病理学的特徴とされている。

CTCAにおけるnapkin–ring sign

冠動脈造影法(coronary angio­graphy;CAG)で得られる画像は,血管内腔の投影像であるため,陽性リモデリングなどの血管壁の構造的変化をとらえ難い。そこで,冠動脈の非侵襲的な評価方法としてCTCAが登場し,器質的狭窄病変の検出に加え,プラーク組織性状の診断に有用であることが報告されている。

Motoyamaら2)は,CTCAと血管内超音波(intravascular ultrasound;IVUS)を用いた研究により,ACSの責任病変では安定狭心症の標的病変よりも,陽性リモデリング,低CT値プラーク,spottyな石灰化を有意に認めることを報告した。Tanakaら3)は,IVUSで観察されたプラーク破綻を認める部位には,CTCA上,陽性リモデリングや,napkin–ring signが高頻度に認められることを報告している。

また,Kashiwagiら4)は,光干渉断層法(opti­cal coherence to­mography;OCT)とCTCAを用いて冠動脈プラークの比較検討を行い,OCT上のTCFA群において,非TCFA群と比較し高頻度(44%vs. 4%,P<0.0001)にnapkin–ring signを認めたと報告している。さらに,TCFA群は非TCFA群と比較し陽性リモデリングの頻度が高く(76%vs. 31%,P<0.001),低CT値プラーク(35.1±32.3 HU vs. 62.0±33.6 HU,P<0.001)を呈したと報告している。これらの研究により,CTCAにおける不安定プラークの特徴は陽性リモデリング,低CT値プラーク,spottyな石灰化およびnapkin–ring signであると考えられる。

ACS発症予測におけるnapkin–ring sign

Virtual–histologyTM IVUSを用いた前向き研究は,ACS発症の予測にはCAGにおける冠動脈狭窄に加えて,プラーク性状が有用であることを示唆している5)

筆者ら6)は,冠動脈疾患の精査目的にCTCAを施行した患者について前向きに予後を追跡した。CTCA上の不安定プラークの特徴である,陽性リモデリング(リモデリング係数1.1以上),低CT値プラーク(CT値30HU未満),napkin–ring signのいずれかの特徴を有するプラークは,不安定プラークを有さないプラークと比較してACS発症リスクが有意に高く(P<0.001),冠動脈径狭窄度とは独立したACSイベント予測因子であった。

さらに筆者ら7)は,運動負荷心筋シンチグラフィにおいて心筋虚血を有さない患者についても,napkin–ring signを伴うプラークがACSイベントの予測因子として有用であることを報告した(ハザード比4.6,P=0.006)(図1)。

したがって,CTCAにおいてnapkin–ring signを伴うプラークは,血行再建を要する病変がない場合でも,ACSの発症リスクとなり,冠動脈危険因子への積極的な治療介入が不可欠である。


【文 献】

1) Little WC, et al:Circulation. 1988;78(5 Pt 1):1157-66.
2) Motoyama S, et al:J Am Coll Cardiol. 2009; 54(1):49-57.
3) Tanaka A, et al:Circ J. 2008;72(8):1276-81.
4) Kashiwagi M, et al:JACC Cardiovasc Imaging. 2009;2(12):1412-9.
5) Stone GW, et al:N Engl J Med. 2011;364 (3):226-35.
6) Otsuka K, et al:JACC Cardiovasc Imaging. 2013;6(4):448-57.
7) Otsuka K, et al:Eur Heart J Cardiovasc Imaging. 2013. [Epub ahead of print]

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