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糖尿病患者における腎障害の成因と病態の多様化【アルブミン尿の有無にかかわらず,急速な腎機能低下の症例など,定型外の病態が出現】

No.4870 (2017年08月26日発行) P.51

柏原直樹 (川崎医科大学腎臓・高血圧内科主任教授)

登録日: 2017-08-22

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糖尿病に腎障害を合併した場合,「糖尿病性腎症」と見なしがちである。近年,糖尿病に合併する腎障害の成因と病態が多様化しつつある。従来から認識されてきた糖尿病性腎症は,長期にわたる不十分な血糖管理を背景に,糸球体過剰濾過,微量アルブミン尿,顕性蛋白尿,ネフローゼ期を迎えてしだいに腎機能が低下する,という過程をたどるのが通例であった。したがって,病歴や合併症(網膜症の有無等)の検索によって診断可能であった。ところが近年,正常~微量アルブミン尿の段階で急速に腎機能が低下する例(rapid/fast decliner)が少なからず存在することが判明した1)。また,ある段階で急速に腎機能が低下する(nonlinear decline)症例の存在も報告されている。

米国で実施された国民健康栄養調査(NHANES)において,成人糖尿病患者を対象とした解析結果が報告されている2)。アルブミン尿の有病率が減少し(1988~94年:28.4%,2009~14年:26.2%),推定GFR(eGFR)低下例は増加していた(同上:9.2%,同上:14.1%)。

このように,定型的な経過をたどる「古典的」糖尿病性腎症(diabetic nephropathy)以外の病態が出現しており,糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)と呼称される機会が増えている。DKDの定義は確定しておらず,糖尿病に付随する血管障害,加齢の関与が推定されている。

【文献】

1) Krolewski AS, et al:Kidney Int. 2017;91(6): 1300-11.

2) Afkarian M, et al:JAMA. 2016;316(6):602-10.

【解説】

柏原直樹 川崎医科大学腎臓・高血圧内科主任教授

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