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学会レポート─2017年米国糖尿病学会(ADA 2017)[J-CLEAR通信(80)]

No.4869 (2017年08月19日発行) P.46

宇津貴史 (医学リポーター/J-CLEAR会員)

登録日: 2017-08-16

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  • 2017年6月9日から5日間にわたり,米国糖尿病学会(ADA)の第77回学術集会が,サンディエゴ・コンベンションセンターに約1万5000人を集めて開催された。学術的な話題よりも「学会発表内容のツイート禁止」という規則のほうが話題になっていた感もあるが,ここでは心血管系(CV)イベントに関連する3報をご紹介したい。

    CANVAS Program─SGLT2阻害薬で再び,2型糖尿病例の心血管系(CV)イベント抑制

    本学会では,2型糖尿病(diabetes mellitus:DM)例に対するSGLT2阻害薬カナグリフロジンのCVイベント抑制作用をプラセボと比較したランダム化試験“CANVAS Program”が,シドニー大学ジョージ国際保健研究所(豪州)のBruce Neal氏により報告された。1次評価項目である「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中」(CVイベント)は,プラセボ群に比べSGLT2阻害薬群で相対的に14%,有意に減少していた〔ハザード比(HR):0.86,95%信頼区間(CI):0.75~0.97〕。オックスフォード大学(英国)のDavid R. Matthews氏によれば,SGLT2阻害薬を1000例が5年間服用すれば,プラセボに比べてCVイベントが23例減る計算になるという。

    SGLT2阻害薬がCVイベントを抑制したという結果は,2015年に報告されたランダム化試験“EMPA-REG OUTCOME”の結果と同様である。しかし同試験で観察された脳卒中の増加傾向〔HR:1.18(NS)〕を,CANVAS Programでは認めなかった(HR:0.87,95%CI:0.69~1.09)。一方,1次評価項目ではないが,「心不全入院」がSGLT2阻害薬群で著明に減少した点は,EMPA-REG OUTCOMEと同様である(HR:0.67,95%CI:0.52~0.87)。

    (1)‌下肢切断が有意に増加。多変量解析後も薬剤がリスク

    有害事象として看過できないのが,「下肢切断」である。ジョージ国際保健研究所のVlado Perkovic氏の報告によると,プラセボ群における発現率3.4/1000例・年に対し,SGLT2阻害薬群では6.3/1000例・年と,有意なリスク上昇を認めた(HR:1.97,95%CI:1.41~2.75)。1000例が5年間服用すれば,SGLT2阻害薬群で14例,下肢切断が増える計算となる。

    多変量解析後も,SGLT2阻害薬服用は下肢切断の有意なリスクだった(HR:1.8,95%CI:1.3~2.5)。

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