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表在性の血栓性静脈炎の病理と対処法

No.4690 (2014年03月15日発行) P.63

山崎 修 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学分野講師)

登録日: 2014-03-15

最終更新日: 2017-08-08

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【Q】

86歳,男性。血栓性静脈炎による皮膚炎の病理と対処法について,具体的な文献を併せて。(大分県 H)

【A】

病理では皮下脂肪織上層〜真皮下層の血管壁が肥厚し,血栓を形成する静脈炎である。治療目標は疼痛,腫脹という症状の緩和と,深部静脈への血栓波及の予防である

急性の静脈血栓症には,表在静脈の血栓性静脈炎(superficial thrombophlebitis)と深部静脈の深部静脈血栓症(deep vein throm­bosis;DVT)がある。
以下では表在性の血栓性静脈炎の病理と対処法について回答する。 

血栓性静脈炎について

血栓性静脈炎は,血栓による静脈閉塞や血栓の遊走による塞栓症状である1)。慢性静脈還流不全や静脈瘤症候群を惹起して下腿潰瘍の原因となる。静脈内に血栓が発生する機序としては血流の停滞,静脈内皮障害,血液凝固能亢進が挙げられる。

原因としては,①打撲などの外傷性,カテーテル留置や静脈穿刺など,②薬剤性(抗癌剤など),③静脈瘤に伴う炎症,④モンドール病,⑤その他(バージャー病,ベーチェット病,凝固系の異常,悪性腫瘍,妊娠,腎炎,肝疾患,経口避妊薬の服用),がある。

臨床症状は主に下腿の表在静脈に沿って有痛性の索状硬結が触知でき,腫脹と発赤を伴う(図1)。単発の場合や,同じ静脈に繰り返す場合がある。繰り返すと徐々に板状に硬化する(図2)。稀に限局された範囲内で遊走する表在静脈の炎症性硬結をきたす遊走性静脈炎もある。一般的には自然寛解する疾患であるが,DVTや肺塞栓を合併することもある。



血栓性静脈炎の病理

皮下脂肪織上層〜真皮下層の静脈炎で,血管壁が肥厚し血栓を形成する(図3)。罹患静脈周囲に限局性の隔壁性あるいは小葉性の脂肪織炎がみられる。Elastica–van Gieson染色で静脈系であることを確認する(図4)2)

血栓性静脈炎の対処法3)〜5)

治療目標は疼痛,腫脹という症状の緩和と,深部静脈への血栓波及の予防である。限局性の病変であれば,湿布(冷または温)や非ステロイド性消炎鎮痛薬の内服で対症的に経過観察する。ジクロフェナクナトリウムゲルやピロキシカムゲルも有効である。通常は数日で軽快し,1カ月以内に寛解となるが,静脈の索状硬結は数カ月触知できることがある。

弾性ストッキングや弾性包帯が有効な場合もあるが,疼痛を増強させることもある。下肢の表在性血栓性静脈炎で抗凝固療法を行うかどうかは議論があるところだが,5cm以上の範囲である場合や,より近位で深部の場合,基礎疾患を持つ患者の場合は短期間の抗凝固療法が適応となる。

抗血小板薬として,クロピドグレル硫酸塩やアスピリンが有効である。抗凝固療法としてヘパリン,ワルファリン併用療法,海外では低分子ヘパリンが適応となる。また,慢性静脈還流不全や静脈瘤症候群を合併している場合は,静脈瘤に対する外科的処置の検討も必要である。潰瘍化した場合は潰瘍の局所処置が必要となる。

【文 献】

1) 玉置邦彦 他, 編:最新皮膚科学大系(第4巻)紅斑・滲出性紅斑 紫斑 脈管系の疾患. 中山書店, 2003, p214-6.
2) 厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班,編:皮膚症状からみた血管炎診断の手引き. 第1版. 金原出版, 2011, p101.
3) Kearon C, et al:Chest. 2008;133(6 Suppl): 454S-545S.
4) Galanaud JP, et al:J Thromb Haemost. 2012; 10(6):1004-11.
5) Kearon C, et al:Chest. 2012:141(2 Suppl): e419S-94S.

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