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疥癬[私の治療]

No.5271 (2025年05月03日発行) P.49

夏秋 優 (兵庫医科大学皮膚科学教室教授)

登録日: 2025-05-04

最終更新日: 2025-05-01

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  • 疥癬はヒト皮膚の角層に寄生するヒゼンダニの感染により発症する感染症で,虫体,糞,脱皮殻などに対するアレルギー反応による皮膚病変と瘙痒を主症状とする。主たる感染経路は肌と肌の直接接触であるが,衣類や寝具の共用などで感染することもある。病型としては,ヒゼンダニの寄生数が数十匹以内の「通常疥癬」と,寄生数100万〜200万匹の「角化型疥癬」にわけられるが,両者の中間型もみられる。角化型疥癬はステロイドの使用や免疫能の低下している人などに発症し,感染力がきわめて強い病型である。

    ▶診断のポイント

    通常疥癬では,腹部,腋窩,大腿,上腕などに紅斑性小丘疹が散在し,男性の外陰部には赤褐色結節がみられることが多い。手関節,手掌,指間部に好発する長さ約5mmの灰白色で線状の疥癬トンネルを見つけ,顕微鏡検査やダーモスコピー検査などでヒゼンダニの虫体や虫卵を検出すれば診断が確定する。

    角化型疥癬では手足や臀部,肘頭部,膝蓋部などに角質増殖や厚い鱗屑を認め,紅皮症状態になる場合もある。爪疥癬では手足の爪が肥厚して角質増殖を伴う。

    疥癬患者との接触機会や家族内同症の有無を含めた疫学的流行状況を診断の参考にする。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【通常疥癬】

    「疥癬診療ガイドライン」1)ではイベルメクチン内服,あるいはフェノトリン外用のいずれかを行うことになっている。外用療法が確実に実行できる患者や内服治療が困難な患者ではフェノトリン外用療法を選択する。反対に,十分な外用療法の実施が困難な患者や内服療法の実施に問題がない患者ではイベルメクチン内服療法を選択する。いずれも妊婦および体重15kg未満の小児に対する安全性は確立されていないが,治療の必要性がある場合は十分な説明を行い,同意を得てフェノトリン外用療法を行う。

    【角化型疥癬】

    イベルメクチン内服とフェノトリン外用を併用する。その場合,両者の作用機序が相反する特性を考慮し,まずフェノトリン外用を行って,12時間以上が経過してからイベルメクチンの内服を行うのが妥当である2)。併用療法は2回行い,その後は皮疹やヒゼンダニの存在を確認した上で必要に応じて追加治療を検討する。爪疥癬では肥厚した角質を除去してフェノトリン外用薬の閉鎖密封療法を行う。

    角化型疥癬は感染力がきわめて強く,医療スタッフへの感染や院内感染拡大の要因となるので,患者の隔離や入室・処置時のガウン着用が必要である。

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