株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

(3)創傷に対する外用薬─皮膚潰瘍治療用外用薬 [特集:ざっくりわかる,皮膚外用薬の選び方]

No.4760 (2015年07月18日発行) P.37

梅林芳弘 (東京医科大学皮膚科学分野准教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-15

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • next
  • 感染リスクがある創には,創傷被覆材(ドレッシング材)よりも,外用薬(皮膚潰瘍治療薬)が適している

    乳剤性軟膏(ゲーベンクリームなど)は,患部に水分を付与し湿潤させるため,滲出液が少なく乾いた創面に向いている

    水溶性軟膏(カデックス軟膏,ユーパスタコーワ軟膏,テラジアパスタなど)は吸水能が高いため,滲出液の多い創に用いる

    過剰な滲出液は,細菌感染を助長し創傷治癒を阻害するため,制御する必要がある

    創傷治癒にとって乾燥環境は不利,湿潤環境は有利であるが,細菌増殖にとっても乾燥は不利で湿潤は有利である。重要なのは,「適度な湿潤環境の保持」である

    皮膚潰瘍治療薬には,特徴的な「禁忌」「慎重投与」が添付文書に記載されているものがあり,薬剤によってはそれらが多岐にわたるため,特段の注意を要する

    1. カテゴリ「外傷」について

    本稿では「外傷≒創傷≒皮膚潰瘍」に対する外用薬,すなわち皮膚潰瘍治療用外用薬(以下,皮膚潰瘍治療薬)について解説する。このカテゴリに含まれる代表的な疾患は,熱傷,褥瘡,下腿潰瘍(多くはうっ滞性潰瘍)である。後2者では,外用療法に加え,潰瘍形成に至った因子(圧迫や循環不全)の除去も必要である。

    2. 創傷被覆材との比較

    皮膚潰瘍の局所療法に用いるものには,大きくわけて外用薬と医療材料(創傷被覆材≒ドレッシング材)があるが,皮膚科医は他科医と比べて前者を選択することが多いと言われている1)。特に,壊死組織,感染・炎症を伴っている場合は,外用薬を選ぶほうが無難である2)。創傷被覆材の利点は毎日交換せず塞ぎっぱなしにしてもいいことであり,欠点は特殊な場合を除いて自宅処置分は保険償還されないこと,最大3週間までしか使えないこと,である。これらの得失を勘案すると,創傷被覆材の最も良い適応は,数日間は処置しなくとも(つまり塞ぎっぱなしでも)感染するリスクが乏しく,3週間以内の治癒が見込まれる創(典型的には浅達性Ⅱ度熱傷)ということになる(深達性Ⅱ度熱傷には創傷被覆材は避けたほうがよい,とされている3))。

    残り5,337文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top